ダルビッシュが抱いた“違和感”「曲がらなくなった」 2試合連続黒星で痛感した課題【マイ・メジャー・ノート】

オリオールズ戦に登板したダルビッシュ有【写真:アフロ】
オリオールズ戦に登板したダルビッシュ有【写真:アフロ】

5敗目を喫したオリオールズ戦「いい所が見つからない」

 パドレスのダルビッシュ有投手は2日(日本時間3日)、本拠地でのオリオールズ戦に登板しソロ本塁打を含む6安打4失点。4回0/3で降板し5敗目を喫した。2登板連続で5回を投げることができず、先発としての責任を果たせなかった。不甲斐ない投球について、終始一定しない投球フォームとリリースポイトを原因に挙げ「よく分からず、バラバラだったという感じ」と振り返った。

 オリオールズ戦の登板は配球に変化があった。スピン系を抑え速球のツーシームを増やすのがゲームプランだった。だが、実戦マウンドでは奏功しなかった。

 初回、2番ジャクソンに曲がり切らないスイーパーを左翼スタンドに運ばれた。体勢を崩しながらもバットのヘッドを利かせた一撃は、2ストライクに追い込んでからの勝負球だった。この失投は、ダルビッシュの状態を照らし出していた。

「すごくアグレッシブな打者なのでスライダーをボールにしたいっていうところなんですけど…。ボールにしようと思っているのが、真ん中に行くっていうのがちょっと多いので。思いっきりちゃんとリリースしようと思ったら、ボールになり過ぎるし。ちょうどいい所がなかなか見つからない」

 3回、得点圏に2人の走者を背負った場面で、左前に2点適時打を許した。打たれたのはまたしてもスライダーだった。振り返ったダルビッシュは、数登板前と同じ言葉を選んだ。「自分の実力不足」。

 7月7日のダイヤモンドバックス戦で復帰登板を果たしてから今季11試合目の登板だったが、スライダーは本来のリリースポイントには至っていない。活路を求め多めに配したツーシームは、対峙した20人の打者に投じた全87球のうち29球(33.3%)を占めた。しかし、許した6安打の3本がその球だった。

オリオールズ戦に登板したダルビッシュ有【写真:ロイター】
オリオールズ戦に登板したダルビッシュ有【写真:ロイター】

マリナーズ戦でツーシームに違和感「曲がらなくなった」

 7月30日のメッツ戦で、右肘の位置を下げ気味にしてサイドスローに近いフォームで今季初勝利を挙げ、日本投手歴代1位の日米通算「204勝」を記録してから1か月が過ぎた。この間、バットの芯を外し凡打に仕留めるツーシームが良いときもあったが、前回、8月27日(同28日)の敵地・マリナーズ戦で「曲がらなくなった」と言う。

 打者のバランスを崩し、バットの芯を外す“動くボール”ツーシームが良いときのダルビッシュが無双状態になることは以前に書いた。おさらいすれば、左打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンへと沈みながら描く軌道は芸術であり、その理想的な軌道を出すためには「リリースで力をしっかり指先に伝えられなければ精度は上がらない」とダルビッシュは繰り返す。しかしこの日は「自分の中で原因は分かっています」と多くを語らなかった。

 通論に惑わされず、世間の常識になびかず、自分で答えを導き出す姿勢を貫くダルビッシュ。この球について7月に聞いた際には、持論を展開している。

「ツーシームは投げ方がフォーシムとはちょっと違うので、体の使い方も違うし。それと、気持ちを入れ過ぎると(体が開き)肘が下がると言う人がいるけれど、僕はあまり感じていないというか、変化するかどうかというのは、シーム(縫い目)がちゃんと回転しているかに依存すると思うので。良いリリースポイントさえ分かれば別に肘が下がろうが腕が上がろうが、どっちでもいい」

登板翌日、キャッチボールで調整するダルビッシュ有【写真:木崎英夫】
登板翌日、キャッチボールで調整するダルビッシュ有【写真:木崎英夫】

ダルビッシュが見据える次回登板「クリアしていきたい」

 今回の登板で新たに課題となったツーシームは「この前のブルペンで唯一しっくりこなかった」と語る。ダルビッシュのことだけに、深めに握り回転を少なくして左打者の外角に沈ませたり、逆に、浅めに握り球速を落として打者のタイミングをずらし引っ掛けさせるというような、同じ球種でバリエーションを出そうとする“試み”もあるのではないだろうか。見る者にも、想像する楽しみを与えてくれるのがダルビッシュである。

 2登板連続の5回未到達で2連敗。ダルビッシュは次回登板に向けて調整に余念がない。

「なんとなくこういうふうにしたいなとか、過去4、5日の調整を見たときにこういうところかなぁっていうのはなんとなくあるので。そういうところをちゃんと調整期間でクリアしていきたいなと思います」

 パドレスの先発ローテーションに変更がなければ、ダルビッシュの次回登板は8日(同9日)、本拠地サンディエゴでレッズ打線に挑む。

○著者プロフィール
木崎英夫(きざき・ひでお)
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続けるベースボールジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。東海大相模高野球部OB。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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