中学では“控え投手”→日本代表へ 名門で挫折経験も…MLBスカウトが見抜いた潜在能力

U18日本代表の神村学園・早瀬朔【写真:加治屋友輝】
U18日本代表の神村学園・早瀬朔【写真:加治屋友輝】

U-18侍・早瀬にMLBスカウト「真っ直ぐと変化球ともに強さがある」

 U-18野球日本代表「侍ジャパン」は14日、沖縄セルラースタジアム那覇で行われた「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」決勝戦で米国代表と対戦し0-2で敗北。悲願の連覇にあと一歩届かなかったが、堂々と世界と渡り合った10人の投手陣。その中でも、リリーフを任された“逸材候補”の働きは準優勝の原動力となった。

 神村学園(鹿児島)のエースとして甲子園に導いた、最速150キロ誇る早瀬朔(はやせ・さく)投手。甲子園では185センチの長身から繰り出される直球を武器に、創成館(長崎)相手に7回120球を投げ1失点の熱投を見せたが、初戦敗退。夏の悔しさを胸に日本代表で腕を振った。

 初戦のイタリア戦では6回1死一、二塁から登板し完璧なリリーフ。1本の安打も許さず抑えて見せた。プエルトリコ戦では4回から登板し2回1安打4奪三振無失点。スーパーラウンドのアメリカ戦では「球が高かった」と捉えられるシーンもあったが、持ち前の伸びのある直球で押した。

 米国との決勝戦では登板なしに終わったが、この大会で成長した部分は大きかった。「通用した部分もあって自信になりましたが、レベルの高さも感じました。アメリカ代表には正直、力負けを感じさせられました。だからこそ次の成長に繋げられます」と前を向く。

 プロの目にも光るものがあったようだ。MLBのスカウトへ匿名であることを条件に、日本代表の中で印象に残った選手について尋ねると「石垣(元気)投手にはもちろん注目していましたが、印象に残っているのは早瀬選手ですね」と返ってきた。「まだ体が出来ていなさそうですが、安定感もあるし身長もある。真っ直ぐと変化球ともに強さがある。伸び代をとても感じます。あとは体が強くなって、浮き球が少なくなれば、さらに良くなると思います」とポテンシャルを評価した。

U18日本代表の神村学園・早瀬朔【写真:加治屋友輝】
U18日本代表の神村学園・早瀬朔【写真:加治屋友輝】

中学では3番手も、体づくりを経て最速150キロ右腕に成長

 世代の代表に上り詰めたが中学生の頃は、まだ目立った選手ではなかった。身長こそ180センチあったが直球は120キロ台でチーム内でも3番手。それでも神村学園の小田大介監督が目を付けた。小田監督は「自分しか声かける人いませんよ」と中学の所属チームから言われたと振り返るほどの注目度だった。

 入学してからは厳しい練習や新しい環境への緊張の影響もあり体重が10キロ以上落ちた。少しずつ増量はしたものの、2年の冬に毎日6食の食事トレーニングを決行。朝食の後、授業の合間に2食目、昼食、練習前に4食目、夕食、寝る前に6食目を食べた。これまで経験したことのない食事の量に挫折しそうな日もあったが、変わりたい一心で取り組んだ。

 そのおかげで体重は10キロ増えて80キロに。球速は144キロから最速150キロに上がり、130キロ後半~140キロ前半だった平均球速も146キロを記録するまで成長した。

 練習中には仲間を盛り上げる声を出し、リリーフ投手がベンチから出ていく際には一番最初にグラウンドへ出て送り出す。マウンドに上がれば闘志むき出しで打者に向かっていく、明るく熱い右腕。次に描くのはプロの舞台。国際大会で成長を遂げた18歳が飛躍する日は近い。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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