U-18侍の正捕手が直面した疲労と痛み ボロボロだった左手…満身創痍で戦い抜いた8試合

U-18の正捕手・横山は8試合でマスクをかぶり勝利へ導いた
満身創痍で走り抜けた。U-18野球日本代表「侍ジャパン」は14日、沖縄セルラースタジアム那覇で行われた「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」決勝戦で米国代表と対戦し0-2で敗れ、悲願の連覇にあと一歩届かなかった。それでも決勝まで怒涛の8連勝は圧巻だった。日々ヒーローが生まれたが、ほぼひとりでマスクを被り続けた横山悠捕手(山梨学院)も間違いなくそのひとりだ。
甲子園では山梨学院の「4番・捕手」として4強に導いた。大会タイ記録に並ぶ、史上6人目の8打数連続安打を達成し、大会打率は.667、1本塁打、6打点と大暴れ。守っても194センチの2年生エース菰田陽生投手を巧みにリードする姿は今夏のハイライトのひとつだった。
だが、決して順風満帆に駆け上がってこられたわけではなかった。山梨学院では2年生の秋に一塁手へのコンバートを経験。冬前には捕手に戻ったものの絶対的な正捕手という立ち位置ではなく、日本代表なんて考えたこともなかった。小、中学時代も日本代表の経験は無し。だからこそU-18日本代表メンバーに選出されたと聞いたときは「まさかでした。選んでいただけるなんて思ってもいませんでした」と驚いた。
日本代表に欠かせぬ男になった。スーパーラウンドの米国戦で値千金の適時右前打を放つなどバットでも貢献。さらに様々な特徴のある10人の投手をほぼひとりで受け続けた。オープニングラウンドの南アフリカ戦のみ欠場したものの、それ以外の8試合は全てフル出場。10日間で9試合と過密日程もあり、スーパーラウンド最終戦の試合前には「正直疲れはあります」と吐露していた。
左手もボロボロだった。世代トップの投手陣の球を受け続け、痛くて仕方なかった。「めちゃくちゃ痛いです。ミットが薄いのもあるんですけど……」と見せてくれた手のひらにはテーピングがぐるぐる巻きにされていた。少しでも衝撃を和らげようと、人差し指と中指の付け根にはシリコンのパッドまで入れた。

公式戦では経験がなかったが…苦しんだ捕球ミス「対応しきれない部分」
精鋭たちの投球は捕球するだけでも一苦労だった。公式戦では一度もパスボールをしたことが無い横山だったが、国際大会ではミスが続いた。「正直、そこには自信があったんですが、スピードや変化球のキレに対応しきれない部分がありました」と苦しんだ。
投手に不安を1ミリでも感じさせたくないと、日々試行錯誤し、誰かがブルペンで投げるとなれば可能な限り受けに走った。それでも「自分の思い描いたプレーはできなかったです。慣れない環境に対応しきれなかったという事がありました」。全力で取り組んだからこそ悔しさが無くなることは無かった。
「こんな大きい大会は初めてだったので、プレッシャーは感じたんですけど、このメンバーとレベルの高い環境で野球ができて良かったです。この濃い2週間の内容を力に変えて、この先の野球人生に活かしていきたいです」
来年からは大学野球に身を投じる。大舞台を経験した“日本の司令塔”は、さらなる飛躍を誓ってグラウンドを後にした。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)