西川龍馬に滲む覚悟「後に響いたら終わるだけ」 靭帯損傷も…早期復帰を選んだ理由

オリックス・西川龍馬【写真:栗木一考】
オリックス・西川龍馬【写真:栗木一考】

西川は14日に規定打席に到達し首位打者に

 左足首の大怪我から復帰し、首位打者争いに急参戦したオリックスの西川龍馬外野手が、悲壮な覚悟でリーグ戦最終盤に挑んでいる。

「(けがからの早期復帰が)後に響いたら終わるだけ。先を見てもしょうがない。別に先が長いわけじゃないんで」。14日、チーム127試合目で規定打席に到達し、打率.314で首位打者に躍り出た西川が静かな口調で明かした。

 敦賀気比高(福井)、王子製紙から2015年ドラフト5位で広島に入団。国内フリーエージェント(FA)権を行使し、2024年シーズンからオリックスに移籍した。

 移籍2年目、プロ10年目で迎えた今季、オープン戦は極度の不振に陥ったものの、開幕直後から復調し6月を打率.313で終え、首位争いをするチームを牽引した。しかし、7月1日の西武戦(セルラー那覇)で走塁中に左足首を痛めて途中交代。「左足関節外側側副靱帯損傷」と診断され、戦列を離れることになった。

 そこからは驚異の回復ぶりだった。大阪の球団施設でのリハビリでは7月中旬には松葉杖を外し、8月2日に本拠地で行われた6月度の「大樹生命月間MVP」の表彰式では、小走りする姿をファンに披露するまでに。8月16日からのウエスタン・リーグ、中日戦(ナゴヤ)2試合に実戦復帰すると、8月19日の日本ハム戦(エスコンフィールド)から1軍に合流した。以後、規定打席に達した9月14日までの22試合で29安打を放ち、クライマックスシリーズ(CS)進出争いをするチームをバットで鼓舞し続けた。

 実は、月間MVPの表彰式後、西川は復帰時期を問われ「今シーズン(リーグ戦中)に復帰してCS(10月15日から)に間に合えば」と語っていた。「ある程度、体が動けるようになるまで、1か月半以上かかると言われていた」のが復帰時期の根拠。今の足の状態は「7〜8割です」という西川にとって、選手生命に影響する可能性のある早い戦列復帰は覚悟の表れだったのだ。

 残り試合も少なくなってくる中で、CS争いのカギを握るのは5試合を残しているソフトバンク戦。8連敗中と厳しい状況だが、西川は「苦手意識は、周りが思っているだけで全くない。勝つためにどうすればいいのか、考えればいいこと」と言い切る。どんな球でも対応して安打にしてみせる天才打者が、チームを引っ張る。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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