相手応援歌を「自分のものに」 ピンチで口ずさむ“堂々”ぶり…ハム畔柳亨丞が見せる強心臓

日本ハム・畔柳はピラティスなど体幹トレ導入→球質向上に手応え
■ロッテ 2ー0 日本ハム(22日・エスコンフィールド)
1死一、三塁。絶体絶命のピンチのはずなのに、マウンド上の日本ハム・畔柳亨丞投手の口元がリズミカルに動いていた。22日にエスコンフィールドで行われた日本ハム-ロッテ戦。その口は、ロッテ応援団から聞こえるチャンステーマを奏でていた。小川を捕邪飛、西川をニゴロに打ち取り、今季3度目の登板で1回無失点。防御率0.00を維持した。
「自分の場合は、あまり自分の世界に入りすぎるのはよくない傾向にあるので、相手の応援歌を聞きながら、リラックスできるようにと思ってやっています。特にロッテの応援歌は格好良くて結構知っているので、そういうのを口ずさんで自分の応援にしていけたらなというのもありますね」
2003年に愛知県で生まれた畔柳。2010年には日本シリーズで地元の中日とロッテが対戦したことは思い出深い。そのときから、ロッテの応援歌は馴染み深いものだったという。「そういうのも含めて、結構詳しいです。何でも知っているんじゃないですかね。セ・リーグもたまに聞いたりしています」と笑った。
DeNA時代の今永昇太投手(現カブス)もよく、走者を背負ったマウンドで相手応援歌を口ずさんでいた。畔柳はまだプロでの登板は9試合目ながら、世界に羽ばたいた左腕に通じるような、ピンチをピンチと思わない心持ちは頼もしい限り。「自分の応援に変えてしまうようなマインドにできるのが理想ですよね」とうなずいた。
中京大中京高から2021年ドラフト5位で入団して4年目の今季は、9月13日に1軍に初昇格し、ここまで2試合で1失点(自責0)。「スピードは気にせず、逆にスピードが出なくていいからキレのある球がいけばいいかなくらいで投げています」と威力ある直球を軸にアピールを続ける。右肘故障後にファーム調整となった際、ピラティスなど可動域を出す体幹トレーニングを導入。「これまではウエートしかやっていなかったんですけど、そういうトレーニングをやって上向いてきた感じはあります」と手応えを得ている。
この日チームは敗れて連勝は2で止まったが、熾烈な優勝争いを繰り広げる中で1軍で堂々と右腕を振る22歳。「いやーもう、昔の自分からしたら信じられない毎日です。子どもの頃に憧れていた景色、舞台に今立てているので、そういう部分も感じながら楽しんで投げられていると思います」。ヒリヒリするようなシーズン最終盤。若き力が確実に、芽吹こうとしている。
○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。
(町田利衣 / Rie Machida)