苦境ド軍の救世主は佐々木朗希? 専門家が見る“適正”…「100マイル超を連発する可能性」

先発の大谷翔平が6回無失点快投で4-0も…またもや救援陣崩れ逆転サヨナラ負け
ドジャースの佐々木朗希投手が、ポストシーズンで鍵を握る存在となる可能性が高まった。チームは23日(日本時間24日)、敵地で行われたダイヤモンドバックス戦に大谷翔平投手が先発。6回無失点の快投を演じながら、不振のリリーフ陣がまたもや崩れ、9回に逆転サヨナラ負けを喫した。若き剛腕の存在がにわかに救世主候補としてクローズアップされている。
現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏は「これまで比較的安定していたベシアまでが、失点はしなかったものの2四球で自滅しかけ、リリーフ陣の間で悪い連鎖反応が起こっていると感じました。エンリケスが2ランされた内角低めのカットボールが決して悪いボールでなかったことを含め、気持ちの問題なのかなと思います」と“空気感”の問題を指摘した。
もう何度、同じような光景を見たことか……。ドジャースは大谷が投手復帰後最長の6イニング、最多の91球を投げ切り、7回表を終了した時点で4-0とリード。ところが継投が始まった途端、雲行きが怪しくなる。
7回裏、2番手のジャック・ドレイヤー投手が2死一塁から適時二塁打を浴び失点。ここで3番手としてマウンドに上がったエドガルド・エンリケス投手も2ランを浴び、あっという間に4-3と1点差に迫られた。
8回はアレックス・ベシア投手が2四球を与えながら、なんとか無失点でしのいだ。しかし1点差のまま迎えた9回、抑え役を任されたタナー・スコット投手が2四死球などで1死二、三塁とされ、犠飛とヒットで逆転サヨナラ負けを喫したのだった。
9月に入ってからのドジャースのリリーフ陣は、スコットが9試合に登板し0勝2敗、防御率8.53。カービー・イエーツ投手が8試合、防御率7.71。ブレーク・トライネン投手は9試合で0勝5敗、防御率11.57と目を覆うばかりである。

「マイナーでの調整登板より、メジャーで投げた方が球速上がる」
一方、佐々木は今季メジャーで8試合に先発し1勝1敗、防御率4.72。右肩インピンジメント症候群のため5月からIL(負傷者リスト)入りしていたが、3Aで先発5試合に加え、リリーフ2試合も経験。24日(同25日)からメジャー復帰し、中継ぎで起用される見込みだ。
「デーブ・ロバーツ監督は、リリーフで誰かに出てきてほしいと切望しているはずです。佐々木は3Aでは100マイル(約161キロ)が出たり出なかったりという状態でしたが、マイナーでの調整登板よりも、メジャーで投げた方が気持ちが入り、スピードが上がる投手がほとんどです。現状の佐々木がメジャーで、しかも短いイニング限定となれば、100マイル以上を連発する可能性が高いと思います」というのが新井氏の見立てだ。
佐々木がNPB時代に1度もリリーフで登板したことがなかった点を危惧する声もあるが「今季先発として試合をつくれず苦労していた佐々木にとっては、1イニングに集中した方が良い面が出やすいと思います」と新井氏は分析。「レギュラーシーズン中に中継ぎのテストを行い、1イニングを0点に抑えて帰ってくるようなら、ポストシーズンでも起用されるのではないでしょうか」と予想する。
ロバーツ監督はその他、ポストシーズンでは好調の先発投手陣の中から若手のエメ・シーハン投手をリリーフへ回す意向を表明済み。さらに「(今月上旬に3Aへ降格したペン・)カスペリアス(投手=今季46試合7勝5敗、防御率4.64)を呼び戻す可能性もあるでしょう」(新井氏)との見方もある。
大谷は6月16日の投手復帰以降、順調に状態を上げてきた。新井氏は「ポストシーズンに入り中3日まで登板間隔が狭くなったとしても、先発で80球くらいまでは任せられるでしょう」と太鼓判を押す。ただ、イニング数や球数をそれ以上増やすことは、今後のことを考えても得策ではないだろう。それだけに、ドジャースはリリーフ陣の立て直しを避けては通れない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)