異例の“ぶっちゃけ会見”から4年 HRや記録より…大谷翔平がこだわり続けるもの

マリナーズ戦後のインタビューに応じたドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
マリナーズ戦後のインタビューに応じたドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

自己&球団新記録となる55号も…大谷が記録以上にこだわるもの

 充実感でいっぱいだった。28日(日本時間29日)、マリナーズとの公式戦最終戦に快勝。ドジャース・大谷翔平投手は地元放送局のTVインタビューに柔和な笑みを浮かべていた。

「本当に最後の最後まで、チーム一丸になって戦いたいですし、シアトルでの3戦も素晴らしい内容で終わっていると思うので。この勢いをポストシーズンでぶつけたいなと思います」

 2023年オフにドジャースへ移籍。リーグの違うマリナーズの本拠地シアトルでは2年ぶりのプレーだった。大谷にとって、マリナーズ、シアトルは何かと思い入れのある地のように感じる。

 イチローさんが活躍したマリナーズ本拠地のT-モバイルパークは「小さい頃から見てきた球場」。シアトル近郊には野球施設「ドライブライン」があり、2021年から当地を訪れては黙々とトレーニング。投打の礎を築いてきた。

 たまたまかもしれないが、勝負師の本能をむき出しにしたのもマリナーズ戦の後だった。2021年9月26日、7回10奪三振1失点と好投したものの、10勝目はお預け。同年は投打の二刀流でブレークして初めてMVPを獲得したが、チームはポストシーズン争いに絡むことなく惨敗した。

 当時はコロナ禍でオンライン取材だった。「プレーオフを逃してフラストレーションは溜まるか?」。こんなストレートな問いかけに偽らずに本音で語った。

「ありますね、やっぱり。もっともっと楽しいというかヒリヒリする9月を過ごしたいですし。クラブハウスの中もそういう会話で溢れるような9月になることを願っていますし、来年以降そうなるように頑張りたいなと思います」

 取材者として大谷を見てきて今年で11年目。いつも淡々と取材対応するが、これほど強い発言を後にも先にも聞いたことはない。エンゼルスへの思いを聞かれた時も語気を強めていた。

「もちろんファンの人も好きですし、球団自体の雰囲気も好きであるので。ただ、それ以上に勝ちたいという気持ちが強いですし、プレーヤーとしてはそれの方が正しいんじゃないかなと思っています」 

 とにかく勝ちたい――。結局、エンゼルスでの6年間は1度もポストシーズンに届かなかったが、その一心が伝わってくる発言だった。

 さて、28日(日本時間29日)のマリナーズ戦。大谷は7回2死、自己&球団最多を更新する55号ソロをバックスクリーン左へ運んだ。周囲は熱狂。ただ、本塁打についての発言はクールそのものだった。

「それだけ打てればチームが勝つ確率が上がると思います。今日は今日として自分のベストを更新できたのはいいことですし、また明日から切り替えて、ポストシーズンへ向けて頑張りたいと思います」

 豪快なアーチは誰もが魅了されるところだが、個人記録は二の次。大谷にとっては、あくまでも勝つための手段の1つだ。「ホームランもそうですけど、四球をしっかり取るっていうのもまた大事な1番の仕事だと思う。状況によって(四球が)大事かなと思います」。日々の発言を聞いていると、勝ちにつながる四球や出塁は、本塁打と同じくらいの価値観を見出しているようにも感じる。

 野球人としての本能を見てから4年。ヒリヒリする10月に臨む大谷翔平は、まさに野球人生の絶頂にいるのは間違いない。二刀流として今世紀初のワールドシリーズ連覇に挑むその姿を、しっかり目に焼き付けたい。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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