乗り越えた父との別れ「力を貸してくれている」 上向いた打撃…西野真弘が秘める感謝

ベテランの西野真弘が打撃でチームをけん引
オリックスの野手最年長、35歳の西野真弘内野手が、ひたむきにボールと向き合い、好調な打撃を維持している。「そこに関しては過信したくないんです。(シーズンが)終わったら話せますけど、今はがむしゃらにやるだけです」と、好調の要因を言葉を選びながら申し訳なさそうに答えた。
西野は東京都出身。東海大浦安高(千葉)、国際武道大、JR東日本から2014年ドラフト7位でオリックスに入団。2年目に二塁を中心に全試合に出場したが、以降は怪我にも苦しみ定位置をつかめずにいた。巧みなバットコントロールでボールをコンタクトして安打を量産するとともに、優れた選球眼で四球を選びチャンスメイクする職人的な打撃は“天才的”と呼ばれることが多い。
11年目の今季、打率.300でオープン戦を終え、開幕直後は3割以上の打率を残したものの打撃不振で2軍に。5月20日の再昇格以降も状態は決してよくなかったが、父を病気で亡くした後の7月から打撃が上向いた。特に9月からはチームを牽引する打撃が光る。9月2日からの出場10試合の成績は、33打数12安打、打率.364で11打点。「どこかで見ていてくれ、力を貸してくれているのだと思います」と、本塁打を放ちホームインした後には、空に向かって指を突き上げる。
8月2日に35歳の誕生日を迎えたが「意識すると自分のスタイルが崩れるので、(年下の選手に)ガツガツ言ったりはしません。今まで通り、求められたら力になってあげたいと思います」と、チーム内での立ち位置は変えない。打撃も同様だ。「強い打球を打つことだけ考えています。次の打者にいい形でつなぎたいだけ」と、殊勲打を放っても発する言葉は変わらない。
ファウルでカットして相手投手の球数を増やしたり、厳しいボールを見極めて奪った四球に喜びを感じるという西野。「(調子が)悪くてもそういうことは絶対にできますから。調子がよかろうが悪かろうが、1打席1打席を無駄にしたくないんです」。一意専心、結果に一喜一憂せずグラウンドに立ち続ける。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)