逆転Vを許した日ハム…MVP捕手が語った“鷹との違い” 鍵握ったポイント「いい選手がすぐに」

中日など3球団で活躍した中尾孝義氏が解説…鍵握った「控え選手」の台頭
2025年のパ・リーグはソフトバンクが連覇を成し遂げた。昨年は独走でゴールインしたが、今年は日本ハムとの熾烈なマッチレースを制する真逆の形。中日でMVPを獲得するなど巨人、西武の3球団で名捕手として活躍した野球評論家・中尾孝義氏はソフトバンクを「出足は悪かったけれど、やっぱり底力がありましたね」と分析する。
昨季とは一転、よもやの“低空飛行”でスタートした。開幕前に栗原陵矢内野手、シーズンに入っても近藤健介、柳田悠岐両外野手ら主力に怪我が相次いだ。主砲の山川穂高内野手のバットも精彩を欠いた。5月1日の時点では借金7で最下位。それでも交流戦優勝で昨季王者らしさを取り戻し、日本ハムを競り落とした。
中尾氏は勝因を「これまでは控えだった選手たちの力」と断言する。「レギュラーがいなくなっても、いい選手がすぐに出てくる。それにプラスして、離れていたベテラン連中が戻ってきたら、そりゃあ強いです」。
象徴として牧原大成、野村勇両内野手、柳町達外野手の名を挙げる。中尾氏は捕手目線で、理由を説明する。「バッティングがしつこい。彼らのようなタイプのバッターが出てくる事によって、打線に切れ目がなくなる。バッテリーから見たら本当に困る。嫌なもんなんですよ」。今や牧原、柳町は首位打者争いを繰り広げるまでにのし上がった。
ソフトバンクは守備面でも課題を抱えていた。昨年までチームの顔、甲斐拓也捕手が巨人にFA移籍。代役には28歳の海野隆司がメインで起用された。「チームとしてキャッチャーを育てなければならないから、我慢して使っていくしかない。海野は最初は何が何だか分からない状態だったはず。でも1か月、2か月と経つに連れて周囲が見渡せるようになってきます。嶺井(博希)の助けもあったんじゃないかな」。34歳の先輩捕手の存在も見逃せないという。
対する日本ハムはここ一番で経験不足が露呈
海野のレベルアップを投手陣も促したと見る。「ホークスは有原(航平)、(リバン・)モイネロ、大関(友久)、上沢(直之)と先発がしっかりしている。捕手はいいピッチャーに育てられる要素が大きいのです」。
現役時代に強肩が売りだった中尾氏は自らの体験を思い起こす。中日でリーグ制覇した1982年、プロ2年目で年上の投手が大半だった。「ベテランの方も『お前なら盗塁されない』と僕の事を結構信頼してくれた。キャッチャー冥利に尽きますよね。どうやったら抑えられるか、試合に勝てるのか。引っ張ってもらい、自分も考えて勉強になりました」。優勝を経験した海野も「だいぶ自信がついていると思いますよ」と推測する。
中尾氏は日本ハムへの賛辞も忘れない。1位、2位の順位は同じでも、昨年は13.5ゲームも差が開いていた。「新庄(剛志)監督の手腕ですよ。就任した頃のあの苦しい成績だったファイターズを変えていきました。ここまで強くした。若いチームなので、勝ち出すと野球の楽しさが余計に分かってくる。どんどん力以上の勢いが増す。今年は、そういった所が出ていたと感じます」。
日本ハムがリーグ制覇に届かなかった部分は、どこなのか。「シーズン終盤で、ここっていう大事な試合で負けているんだよねぇ……。経験不足かな。でも今年の経験は凄く貴重。来年からは、もっと強くなりますよ」。
優勝争いで盛り上がったパ・リーグ。ソフトバンク、日本ハム、そしてオリックスの上位3チームが、CSで日本シリーズ進出を懸けて再び激突する。中尾氏はレギュラーシーズン同様の“熱パ”を期待している。
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)