“勝負弱い”を払拭…大谷翔平が大舞台で輝くワケ 専門家が見た「161/162」

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

レギュラーシーズン得点圏打率.247も俄然雰囲気が変わってきた

 大谷翔平投手を擁するドジャースは、レッズとのワイルドカードシリーズ(WCS)を2勝0敗で制し、フィリーズとの地区シリーズに進出した。4日(日本時間5日)に敵地で行われる第1戦では、大谷が先発投手を務める。初めて投打二刀流で臨んでいるMLBポストシーズンの活躍に、期待は高まるばかりだ。

 大谷は「1番・指名打者」として野手に専念したWCS2試合で抜群の勝負強さを見せた。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏は「まず第1戦の初回先頭打者本塁打で、ポストシーズン初戦の初っ端にチームを勢いづかせました。第2戦の6回には、スコアを3-2の1点差から2点差へと広げる右前タイムリー。これも試合の主導権を握る上で、大きな意義のある一打でした」と称える。

 今季の大谷はレギュラーシーズンで、自己最多の55本塁打を量産するなど圧倒的な技術とパワーを披露した一方で、得点圏打率が.247(93打数23安打)にとどまり、“勝負弱い”と見られることもあったが、ここにきて俄然雰囲気が変わってきた。

 新井氏は「大谷はポストシーズンに入って、気持ちの上でギアが上がったと思います。第1戦の初回先頭打者本塁打は、その証し。そうでなければ、なかなかホームランにはできない球でした」と指摘する。レッズ先発の右腕ハンター・グリーン投手に対しカウント2-1から、内角いっぱいに来た161キロのストレートを一閃。弾丸ライナーで右翼席へ放り込んだのだった。

「相手投手にしてみれば、スピードもコースも申し分なく、『あれをホームランにするの?』と驚き、あきれるばかりだったと思います。技術とパワーが詰まった一発でした」と続けた。2試合で9打数3安打(打率.333)4打点2本塁打の数字以上のインパクトがあった。

ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

レギュラーシーズン“ラス前”の試合を欠場「気持ちの入り方が違う」

 一方、第2戦6回のタイムリーは対照的だった。1死一、三塁の好機でレッズ3番手の右腕ニック・マルティネス投手に対し、初球からチェンジアップ、ストレートを4球連続ファウルし、カウントは0-2と追い込まれた。それでもストレートとカットボールのボール球を見送った後、ボールになるチェンジアップをしぶとく拾い、一、二塁間を破る右前適時打。新井氏は「打席の中で絶対に諦めないという気持ちが現れていました」と見た。

 大谷はレギュラーシーズン161試合目、9月27日(同28日)のマリナーズ戦を欠場した。フィリーズのカイル・シュワーバー外野手との激しい本塁打王争いの最中だったが、ポストシーズンへ向けて体調を整えることを優先した。「そういう気持ちの入り方が、充実した打撃内容につながっていると思います」と新井氏はうなずく。投打二刀流の想像を絶する負担も、今の大谷ならこなし切れるのかもしれない。

 チームはワイルドカードシリーズ2試合でも、リリーフ投手陣には一抹の不安が残った。2試合で18得点を叩き出した打線と安定した投手陣が今後も頼みだが、言うまでもなく、大谷はその両方で鍵を握る存在だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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