弱体化したマリナーズの“転換点” イチロー加入も混沌…GMの理念と名将の言葉【マイ・メジャー・ノート】
地区優勝を果たしたマリナーズナイン【写真:ロイター】混迷を極めていたマリナーズの“分岐点”
短期決戦の秋がシアトルに訪れている。
24年ぶりの地区優勝を果たし4日(日本時間5日)に初陣を迎えるマリナーズだが、前人未到の10年連続200安打を放ったイチロー氏(球団会長付特別補佐兼インストラクター)がまばゆいばかりの輝きを放っていた頃のチームは、混迷を極めていた。
オリックスからマリナーズへ移籍した2001年にメジャー最多の116勝(勝率.716)を挙げたが、ワールドシリーズ進出へ1歩手前のリーグ優勝決定シリーズで敗退。以後、チームは弱体化していく。
ディポトGMが掲げたチーム理念「C the Z」
大枚をはたき複数年の大型契約で名のある選手を獲得するチーム作りから一気に舵を切ったディポトGMは、チーム理念「優位に立てるカウントを常に意識する」を掲げた。新味はないが、2019年春のキャンプで彼に聞くと、その理念を裏付ける意思決定への道筋が投影されていることが分かった。
「ストライクゾーンの見極めに自制を利かせることはとても大事なんです。打者はいい球を逃さずに打つ。これがしっかりできれば必然的に打者優位のカウントに持っていける。逆に投手はゾーンを攻めることで球数を少なくすることができ、先発投手は長い回を投げられ勝利に近づく。ただ、ストライクゾーンと言っても、打者にとって打ちやすい所ではだめで、苦手とする所を突かなければ無意味なのは当然です」
ディポトGMはこの理念を「C the Z(Control the Zone)」と呼び、噛み砕いた。
選手の心情に寄り添ったサービス監督
低迷マリナーズに風穴を開けたディポトGMが就任直後に招聘したのがスコット・サービス監督だった。2022年、マリナーズは米国のスポーツ史上ワーストだった「20年連続プレーオフ進出なし」の汚名返上をシーズン最終戦のサヨナラ勝ちで果たしている。退団する昨年8月途中までの9年間で通算680勝642敗、勝率.514を記録し、勝てるチームの礎を築いたサービス監督は現役時代に捕手だったこともあり、今季60本のホームランを放ち全国区に躍り出たカル・ラリー捕手の素質を高く評価していた。
対話を重んじ、思慮深い言葉で選手の心情に寄り添ったサービス監督はウィスコンシン州の出身で、同州のNFL名門チーム、グリーンベイ・パッカーズを9年間指揮し、チャンピオンに4度輝いている伝説的な名ヘッドコーチ、ヴィンス・ロンバルディを「マイヒーロー」に挙げる。スーパーボウル第1回、第2回大会を連覇したロンバルディは多くの名言を吐いたことでも知られている。いくつか挙げると……。
「打ちのめされたかどうかではなく、立ち上がったかどうかが大切だ」
「自信は伝染する。そして自信のなさも伝染する」
「勝利をつかむ者は最後までやめなかった者だ」
「練習(work)の前に成功(success)が来るのは辞書だけだ。厳しい練習は、成功のために支払わなければならない代償だ。進んで代償を支払うなら、何でもやり遂げられるだろう」
「成功の対価は困難な仕事である」
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

