ブーイング&ヤジも「楽しめた」 大谷翔平が完全アウェーで見せた“まさかの行動”

フィリーズ戦に登板したドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
フィリーズ戦に登板したドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

「過大評価だ」ブルペンでの投球練習中には容赦ないヤジが飛んだ

 まるで映画のワンシーンのようだった。ブルペンへ向かうドジャース・大谷翔平投手はスタメン紹介で名前が呼ばれると、真っ赤に染まったスタジアムから大ブーイングを浴びた。だが、ここからが見ものだった。夕焼けの空へグラブを持った左腕をピンと伸ばす。ブーイングの声に反応してガッツポーズを作ったのだ。

「ゲームとゲーム前はいい集中力で楽しんで。全体的に楽しめたかなと思います」

 怯むどころかブーイングを楽しむとは……。改めて強靭なメンタルを感じさせるシーンだった。

 メジャー屈指の熱狂的なファンを誇るフィラデルフィア。大谷への“洗礼”は確かに酷かった。試合前、グラウンドに出てきただけで耳をつんざくほどのブーイング。ブルペンで投球練習する17番には「Fワード」や「7億ドルなんて過大評価だ」との容赦ないヤジも。「イッペイ!」と前通訳の名前を連呼するファンもいた。何とかイライラさせよう――。そんな意図も感じ取ったが、当の大谷は集中し切っていたようだ。

「試合前はデータ整理をしてる段階では緊張しましたけど、比較的ゲームとゲーム前はいい集中力と楽しんで。ブルペンのセッションも今まで以上にいいセッションでしたし、いい感じで試合に臨めてたかなとは思います」

 2回に右翼テオスカー・ヘルナンデスの拙守もあって3失点したが、3回以降は立て直して6回9奪三振3安打3失点。クオリティスタートと試合を作り、ポストシーズン初勝利を手にした。

 大谷とフィラデルフィアと言えば、メジャー挑戦前だった2017年アリゾナキャンプ中の発言が思い出される。MLB公式サイトによるインタビューで「どの都市に興味があるか?」との質問に「ロッキー像です。写真が欲しい」と回答。フィラデルフィアにある観光名所を挙げていた。

 あれから8年。フィラデルフィアで受けた洗礼にも屈することなく、不屈の闘志を見せつけた。逆境を乗り越えていくその姿は、ご当地の映画ヒーロー、ロッキー・バルボアのようだった。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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