岸田護監督が徹する役割「コーチ室にあまり行きません」 見据えた今後「競争激化が一番」

オリックス・岸田護監督【写真:栗木一考】
オリックス・岸田護監督【写真:栗木一考】

就任1年目で2年ぶりにCS進出、選手に感謝「勝たせてくれた」

 オリックスの岸田護監督が、5日の楽天戦(楽天モバイルパーク)でレギュラーシーズンを終えた。5位のチームを引き受け、オープン戦最下位からスタートしたものの、序盤は首位を快走。投打に怪我人が続出する中で優勝争いからは後退したが、一度も負け越すことなく3位で2年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出を決めた。

「優勝はできず、上位2チームからは離されましたが、本当にあの子たち(選手)が勝たせてくれたと思います。新米監督で足りないところだらけ。あの子たちをもっと勝たせてあげられるように勉強しなくてはと思います」。CS進出を決め来季の指揮も執ることが決まった夜、岸田監督が静かに口を開いた。

 岸田監督は履正社高(大阪)、東北福祉大、NTT西日本から2005年大学生・社会人ドラフト3位でオリックスに入団。4年目に10勝を挙げた後、クローザーやセットアッパーとして活躍し2019年に現役を引退した。翌年から2軍投手コーチを務め、2024年6月から1軍投手コーチに配置が変わり、退任した中嶋聡前監督の跡を継ぎ監督に就任した。

 新監督の実戦スタートとなったオープン戦は、3勝10敗3分けの最下位だった。「メチャメチャ負けました。野手陣は頑張ってくれたのですが、投手陣に離脱者が多く、若い投手を固めていく中で大量失点をして負けることが多かったですね。投手陣の整備を急がなくてはいけなかったのでどうしてもああいう形になってしまいました」と申し訳なさそうに振り返った。

 12球団で最年少監督。しかも、3連覇を果たした名将から託されたバトンはことのほか重かったに違いない。「(中嶋前監督は)選手兼任コーチや2軍監督を務められ、経験値も当然、高い。勝負事ですから勝ったり負けたりしますし、うまいこといっても負ける時もあるし、全然アカン時でも勝てる時があります。何をやってもダメという時も必ずあるんです。その時にどうやっていくかなのですが、僕のその経験値は浅いですし、ガラッと改善できるような知識も経験もないんで、どうしても手探りになってしまいましたね」と振り返る。

 コーチとしての指導者経験は5年。そのうち1軍は僅か約4か月だった。「経験不足も何も経験していないですから。でも、やってみないとわからないところから始まるので、最初ってそういうもんだと思います。野球に限らず、どの仕事にしても当然、失敗から始まるので。僕は何もできないところからやっているので、そんなにうまくいかないと思って何でも取り組んできました。足りないところだらけなので、そこを何とか穴を埋められるようにとは考えてきました」。

岸田監督が意識する役目「マネジメントするのが仕事」

 そんな中で心掛けたのは、選手が結果を恐れずプレーできる環境を作ることだったという。「基本的には、選手が恐れずにやることが大事だと思います。選手の時から僕もそうだと思っていました。当たり前にできることが一番なのですが、難しい場面で失敗してはいけないという頭でプレーするのと、思い切ってやって失敗するのなら仕方がないと思ってプレーするのでは、大きく変わってくると思うので。思い切ってプレーをしないと“奇跡のパフォーマンス”みたいなものは出ないと思うので。そこは暗くならず前向きに捉えていくように、コーチの方々ともよく話し合いましたね」と語る。

 コーチ陣への感謝も口にした。「本当によくやっていただいています。そこにトップダウン的に言うことはありません。コーチ室にもあまり行きません。コーチだけで話すことが多く、そこにいると話が変わってきたりするので。マネジメントするのが僕の仕事。指導者ではなく、マネジメントをする側の人間になっているので、チームが強くなるようにうまく回していくことが必要と思っています」。現場での指導はコーチ陣に委ね、自らの職責を全うすることに徹する。

「どのチームも優勝を目指すのですが、1年や2年でなく、常勝チームになるような組織をマネジメントしていかないと、と思っています。当然レベルアップは必要で、もっと質の高いものにしていかなくてはいけないと思います。(ファームの)若い子たちも当然、うまくなってくると思いますから、競争が激化するのが一番いい方向だと思います」。現役引退のセレモニーのスピーチで「オリックスは絶対に強くなります」とファンに約束した岸田監督は、CSを前に来季以降のチーム作りも見据えた。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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