佐々木朗希、「英語わからない」の真意 会見で見せた姿勢…米で身につけた“脱日本気質”

会見に出席したドジャース・佐々木朗希【写真:荒川祐史】
会見に出席したドジャース・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

敵地フィラデルフィアで2試合連続セーブ、辛辣なヤジに仰天発言「英語も分からない」

 ドジャース・佐々木朗希投手が6日(日本時間7日)のフィリーズとの地区シリーズで2試合連続セーブを挙げた後の発言が話題になっている。熱狂的な敵地ファンのブーイングやヤジについて「英語も分からないので、何を言っているか分からない。気にせずに投げられたかなと思っています」と発言。ファンからは「メンタル強すぎる」「鈍感力すごい」などと反応があったが、米メディアはどう見たのか。ロサンゼルス・タイムズの敏腕記者ディラン・ヘルナンデス氏に聞いた。

 そもそも本当に英語が分からなかったのか。決してそんなことはない。スプリングトレーニングでは初日から右腕グラスノーら投手陣と積極的に交流。英語どころかスペイン語を話す中南米出身選手の輪にも自ら入っていくほどだった。「話すこと、聞くことはしっかり出来ている」とは球団関係者だ。

 では、なぜ晴れの舞台で「英語も分からない」と発言したのか。ヘルナンデス記者は「自信が出てきたから」と指摘する。

「英語が分からないというより、ヤジも気にならないぐらい集中している、自信を持っている。そういうことだと思います。ヤジなんて、どうだっていいんです」

 同氏はさらに続けた。「言葉が分からなくても声のトーンとかで、どういう感情で話しているのかは分かるはず。言葉が分からなかった場合、普通は知りたくなると思います。他の投手や通訳に『なんて言っているの?』と聞いたり。だけど、今の彼にはどうだっていいこと。知りたくもない。興味がない。関係ない。それだけ自信があるということです」。

会見ではアイアトン通訳をイジる場面も「ジョークも言える余裕も出てきている」

 決して周囲の声に惑わされない。LAタイムズで長くコラムニストを務めるヘルナンデス氏は、米国で活躍するための素質だと力説する。

「エースになるような投手はそう考えてないとダメだと思います。多くの日本人は『自分は凄くない。努力するだけ』と謙虚な姿勢ですけど、米国ではそれではダメ。バーランダーを見てみてください。『自分ができる仕事をやれば絶対に誰も打てない』というのが投げる姿から伝わってきます。(今の佐々木には)エースになる素質はあると思います」

 佐々木を大船渡高3年夏から追ってきたヘルナンデス記者に言わせれば、1月のドジャース入団会見では佐々木が「不安そうに見えた」という。

「やはり体(右肩)に違和感を感じていたんじゃないでしょうか? 球速も出なかったですし、コントロールの悪さにはビックリしました。でも、今はそれを乗り越えた。ブルペンに入ってから『打てるなら打ってみろ』という感じで投げている。2年前に完全試合をやった時の佐々木朗希です。自信がついてきているのかなと思います」

 そして6日(同7日)の試合後に行われた5分間の会見では佐々木から自信を感じさせるシーンがあったという。「リリーフで投げると決まった時、これだけチームに頼りにされるのは予想していたか」と問われ、「僕はしてなかったですけど。ウィルさんがずっとしてくれてたので。もう頑張るだけです」と回答。横にいたウィル・アイアトン通訳を“イジった”のだ。

「ジョークも言える余裕も出てきています。先発投手では成功できるか分からなかったけど、今の自信を見たら、この先もいけると思います。私は怪我さえしなければ成功すると思っています」

 8日(同9日)にフィリーズとの地区シリーズ第3戦が控えるこの日の練習では、キャッチボールでも笑顔が目立った。23歳ルーキーがつかんだ確かな自信は、今世紀初のワールドシリーズ連覇を目指すドジャースの力となるはずだ。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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