楽天を1年で戦力外…26歳で異国挑戦 当たり前じゃなかった“日本式”「びっくりした」

元DeNA、楽天の櫻井周斗は今季から台湾プロ野球でプレー
異国で新たな野球人生をスタートさせた。2024年オフに楽天を戦力外になった櫻井周斗投手は、2025年シーズンから台湾南部の都市、高雄を本拠地とする台湾プロ野球(CPBL)の台鋼ホークスでプレー。8月17日に初登板、初勝利を挙げた。日本とは異なる野球文化の中で、貴重な経験を積んでいる。
櫻井は東京・日大三高から2017年ドラフト5位でDeNAに入団。5年目の2022年に左肘の手術を受け、オフに育成契約に移行した。翌2023年に支配下に復帰したが、2年連続で1軍登板なしに終わり、12月に行われた現役ドラフトで楽天に移籍。しかし、移籍1年目の2024年は8試合の登板にとどまり、オフに戦力外通告を受けた。
現役続行を目指し、台鋼ホークスの入団テストを受け入団。それまで台湾野球をしっかり見たことはなく、イメージといえばチア人気が真っ先に思い浮かぶ程度だったが、昨年開催されたプレミア12で世界一に。さらに複数の日本人選手が台湾球界でプレーしていることが、決断の決め手となった。
実際にマウンドに立ち、最も驚いたのは観客との距離の近さだった。「日本だったらファンの方が外野席で応援しますが、台湾はバックネット裏で応援しているので、とにかく距離が近い。声援がはっきり聞こえるんです。最初はその近さにびっくりしました」。さらに、ピッチクロックや台湾特有の暑さや雨の多さなど、日本との違いに適応する必要があった。「雨で試合が中止になって登板が延期になることもありました。そういうときの調整の仕方も、2軍で経験を積む中で適応できるようになりました」。その成果もあり、8月17日に1軍で初登板、初勝利を挙げた。
日本では主に中継ぎとして登板していたため、キャリアを通じても初の勝利投手となった。「初勝利を台湾で挙げることができてよかったです。台湾の選手は打球のスピード、スイングスピードが速い。僕は正直、あんまりコントロールがいい方ではないんですけど、バッターにとって打ちづらい球を投げられていると思います」。と自己分析している。
言語の壁に苦戦も…練習の合間に勉強
言語面では当然ながら最初は苦労した。現在も通訳なしでは充分な会話は難しいが、海外でプレーする以上は当然のことだと割り切っている。「練習後の空いた時間に勉強をしています。通訳の方は休みの日も観光に付き合ってくれて、本当に助かっています」。本拠地の高雄を拠点としながら、夜市を楽しんだり、首都・台北にある台北ドームでの試合時には周辺を観光したりと、異国での生活を満喫している。
それでも、外国人選手が異国でプレーを続けるのは難しい。ベンチ入り25人中3人までという外国人枠の争いを制する必要があるからだ。台湾では外国人は投手が多いため、先発ローテーションでいかに仕事ができるかが重要だという。
「結果を出すのが前提で、どれだけチームに貢献できるかがダイレクトに関わってきます。自分が結果を残しても、他の1軍の投手が良ければ上がれないこともある。巡り合わせもありますが、1軍に上がったタイミングでしっかり結果を出せたのは良かったと思います」
現役ドラフト、そして戦力外通告を経てたどり着いた異国の地。台湾プロ野球への挑戦は、野球選手としてのさらなる成長の機会となった。言語や文化の違いを乗り越えながら、26歳の左腕は新たなキャリアを歩んでいる。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)