大学未登板→3度の指名漏れも… ドラフト戦線急浮上、元ハムの監督が期待する“隠し玉”

オイシックス・牧野憲伸【写真:球団提供】
オイシックス・牧野憲伸【写真:球団提供】

オイシックスの牧野憲伸は6月に救援に転向して頭角を現した

“遅咲き”の左腕が、ドラフト戦線に急浮上している。オイシックス新潟アルビレックスBCの牧野憲伸投手は2年目の今季、41試合に登板して防御率2.90。6月の救援転向後に頭角を現した。最速153キロの26歳は「年齢も重ねてしまっているので、ラストチャンスくらいの意気込みです」と運命の時を待つ。

 昨オフに投球フォームを見直し、トレーナーらのアドバイスを受けてウエートトレーニングの方法を変更。昨季までの最速146キロから、実に1年で7キロもアップした。直球の平均球速は昨季は138キロほどだったが、今季は常時150キロ近くを投げている。

 ここまでの歩みは険しかった。富士大時代はリーグ戦の登板ゼロ。「怪我も多かったし、シンプルに実力が足りていなかった」と一時は野球を辞めることも考え、就職活動にも心を向けた。しかし「普通の仕事をして生活している姿を想像したら、自分に言い訳をしていそうだなと。それならとことんやろうと思いました」。

 本気でNPB入りを目指すことを決め、独立リーグ・ルートインBCリーグの信濃グランセローズに進み、2年間在籍。ともに調査書が届き、特に2年目は12勝を挙げて最多勝に輝いていたがドラフト指名はなかった。「『ああ、今年もか……』って思いました。2年かからなくてどうしようと考えたときに、環境を変えるのもひとつの手かなと。ちょうど(オイシックスが)イースタン・リーグに参加するということで、2軍相手に戦えるのが魅力だったので」と2024年から戦いの場を新潟に移した。

育成でヤクルト入り→支配下昇格で2勝の下川は同学年「負けたくない」

 昨季は全て先発で23試合に登板して3勝9敗、防御率4.24。調査書も届かず、ドラフト当日は「見ようと思ったんですけど、モヤモヤして」とジムでひとり、ウエートトレーニングに汗を流していた。すると同学年でいつも一緒に練習していた下川隼佑投手が、ヤクルトから育成3位で指名された。下手投げ右腕は5月に支配下をつかみ、1軍で2勝をマーク。「刺激しかない。もちろんうれしい気持ちもありますけど、やはり負けたくない」と複雑な感情が渦巻いている。

 日本ハムで通算82勝の武田勝監督は、「昨年は真っすぐと変化球の腕の振りに差があったり、持っているものはいいけどまだピッチングはできていない状態だった。出力を上げるために後ろ(救援)をやってみようかと言ったらきっちりハマってくれて、出力を上げながら、自分のペースでファウルを取ってカウントを作ってチェンジアップで落とすパターンができてきたので、これぞ左という投手です」と評した。

 自身は27歳でプロ入りしているだけに「年齢は関係なく、力でドラフトにかかってほしい選手。隠し玉じゃないけど……。これからもっとウイニングショットを明確にして、スライダーでいつでもストライクを取れる投手になれば、1年目からリリーバーとして成功すると思う」と期待を寄せる。貴重な救援左腕として、“4度目の正直”を果たすことはできるだろうか。

(町田利衣 / Rie Machida)

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