日本去って2年…母国で掴んだ“頂点” 忘れぬ西武への思い、飛躍を生んだ原点「39」

台鋼の呉念庭が母国で首位打者に
台湾プロ野球(CPBL)は6日にレギュラーシーズンが終了。首位打者を獲得したのは台鋼ホークスの呉念庭内野手だ。西武から母国に活躍の場を移して2年目の今季、打率.328と打撃が大きく飛躍した。好調の背景には、新たな環境への適応と、バット、打撃フォーム両面での改革があった。
2023年オフに「台湾で主力として活躍し、家族や友人の前でプレーしたい」と西武を退団。会見では涙を流した。2024年6月に行われた台湾プロ野球のドラフトを経て、台鋼ホークスに入団した。シーズン中盤からチームに合流したが、8月の試合で守備の際に打球が顔面を直撃し大けがを負って離脱。台湾での1年目は満足なプレーができなかった。
「今年は台湾の野球に慣れたのが一番大きいですね。去年はシーズン途中からの参加でリズムがつかめなかった。今年はキャンプから1年通してプレーできたことが大きいと思います」。キャンプからチームとともにスタートし、準備段階から万全な状態で臨めたことが安定した成績につながった。
さらに打撃面では、バットの変更が転機になった。「魚雷バットに変えてからバットスピードが速くなって、ボールの軌道を的確に決められるようになり、結果も出ています。しばらくはこのバットを使おうと思っています。フォームも少し改善して、いい流れができています」。今季途中から、台湾プロ野球でも使用可能になった「魚雷バット」が好成績につながっていると、手応えを口にする。
今季から、背番号を「67」から西武時代と同じ「39」に変更した。「この番号が一番好きです。プロに入ってからずっとこの番号でやってきたから馴染みがあるし、ライオンズ時代に僕を覚えてくれたファンは『39』で覚えてくれている。ライオンズは自分を成長させてくれたチームですし、いろんな思いがまったチームです。戻したいと思っていました」。日本で8年間慣れ親しんだ背番号「39」は、今季の好成績を支える確かな土台にもなった。
台湾でも日本のプロ野球は放送されており、今でも古巣・西武の試合を欠かさずチェックしている。「15年も住んでいましたけど、本当に日本が大好きなんです。シーズン中は行けないですけど、オフになったら必ず日本に行きたいです。『丸亀製麺』が恋しいです」と笑う。
母国での活躍を夢見て熟考の末に日本を離れた32歳は、日本で磨き上げた技術と経験を活かし、台湾で新たな打撃スタイルを確立。首位打者という最高のタイトルを手にした。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)