佐々木朗希に起きた“異変” 160キロ出ず…専門家が明かした要因「違う種類の重圧」

ベンチに戻るドジャース・佐々木朗希【写真:荒川祐史】
ベンチに戻るドジャース・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

リリーフ転向後これまでは無四球無失点を続けていた

【MLB】ドジャース 2ー1 ブルワーズ(日本時間14日・ミルウォーキー)

 初戦勝利も、一抹の不安を残した。ドジャースは13日(日本時間14日)、敵地で行われたブルワーズとのリーグ優勝シリーズ第1戦に2-1で勝利。しかし、リリーフ転向以降、これまで完璧な投球を続けてきた佐々木朗希投手は9回に登板するも、1安打2四球1犠飛を許して1点を失い、イニングを全うできずにマウンドを降りた。自慢の速球も、1度も160キロに達しなかった。

 2-0とリードして迎えた9回。守護神としてマウンドに上がった佐々木だが、この日は少し様子が違った。先頭のケーレブ・ダービン内野手をインハイの159キロのストレートで詰まらせ、三飛に仕留めたまでは良かったが、続いて左打席に入った両打ちのアイザック・コリンズ外野手に対し、制球が定まらず四球を与える。

 さらに代打のジェーク・バウアーズ内野手に156キロのストレートを中越え二塁打され、1死二、三塁の一打同点危機を招いた。続く1番打者・ジャクソン・チョウリオ外野手にはインハイの158キロのストレートを軽々と中犠飛され、1点差に迫られる。ストレートの球速が1度も160キロに達していないことが、佐々木の“異常事態”を物語っていた。

 ストレートに自信を持てないためか、2番のクリスチャン・イエリッチ外野手には、7球を投じたうち6球がスプリットだったが、こちらもいつものように空振りを奪うことができず、四球で歩かせる。佐々木をここで降板を命じられ、2/3回1安打2四球1失点の数字が残った。22球中ストレートは13球で球速は155~159キロ、残りの9球が130キロ台のスプリットだった。

 試合は結局、佐々木の後を継いだブレイク・トライネン投手が四球を与え、2死満塁の一打逆転サヨナラ負けの窮地にまで追い込まれたが、4番ブライス・チュラング内野手を三振に仕留め辛くも逃げ切った。

 それにしても、佐々木はどうしたのか。レギュラーシーズン最終盤にリリーフ要員としてメジャー復帰を果たし、これまでの6試合(レギュラーシーズン2試合、ポストシーズン4試合)は計7回1/3、3安打無四球無失点の快進撃を続けていた。

4日前に3回のロングリリーフこなしパーフェクトの快投

 直近は9日に行われたフィリーズとの地区シリーズ第4戦で、同点の8回から延長10回まで、3イニングをパーフェクトに封じる快投。この日はそこから中3日のインターバルを空けての登場だった。

 前回登板で3イニングのロングリリーフをこなした疲労が残っていたという見方もある。しかし、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏の見方は違う。「先発の(ブレイク・)スネルが8回まであまりにも素晴らしい投球をして(1安打無四球10奪三振無失点)、後を継ぐ佐々木にこれまでと違う種類の重圧がかかったのだと思います。クローザー専門の投手であればともかく、リリーフとしての経験が浅い佐々木は、慣れないポジションで上手く気持ちをつくれなかったのでしょう」と推察する。

 確かに、サイ・ヤング賞2回の実績を誇る先発のスネルはこの日、許した走者は3回の先頭打者に中前打された1人のみ。しかも、この1人も牽制球で誘い出して刺し、結局8イニングを打者24人で片づけていた。完全試合に近い投球だったと言っても、過言ではない。これを見た佐々木は自然に力が入り過ぎ、やがて球速が上がらないことから焦り、リリーフ転向後無四球で来た制球力まで崩したのかもしれない。

 初のリリーフ失敗の要因が体調面でなく精神面にあったとすれば、次回以降の復調に希望が持てる。新井氏は「この日の失敗も貴重な経験のうち。逆転負けを喫する前に代えてもらったことも、良かったと思います。おそらく次回登板からは、実力を発揮できるのではないでしょうか」と見る。

 いまや、ドジャースにとって“クローザー佐々木”は2年連続ワールドチャンピオンへの鍵を握る存在。早速次回登板で普段通りの投球を披露し、不安を払拭したいところだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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