山本由伸が人生で初めて感じた“恐怖” 口にした弱音…脳裏に刻まれた震える足

山本由伸、昨季PSのパドレス戦は「野球人生で初めて、マウンドに行くのが怖かった」
【MLB】ドジャース 5ー1 ブルワーズ(日本時間15日・ミルウォーキー)
初球を被弾した。現実を受け入れると深く頷き、また新しいスタートラインに立った。ドジャースの山本由伸投手は14日(日本時間15日)、敵地で行われたブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズ第2戦の先発マウンドを託された。9回111球で3安打1失点。米国で初めて27個目のアウトを奪うと、ナインに祝福された。あどけない笑みの奥底には、乗り越えた恐怖があった。
初回、先頭打者に初球を完璧に捉えられた。右中間スタンドに届く白球を見届ける数分前、投球練習の1球目を投じるまで、時間が掛かっていた。足場をきっちりと確認し、少し固めてから投球モーションへ。数秒間だけ“葛藤”と戦っていた。
「今でも覚えてますよ。忘れられるわけがない。野球人生で初めて、マウンドに行くのが怖かった。足もガクガクに震えていたし……(笑)。楽しいっていう感覚が、少しだけ遠く感じた試合でしたね」
昨年10月11日(同12日)に本拠地で行われたパドレスとの地区シリーズ第5戦。負ければ終わりの試合で、ダルビッシュ有投手と投げ合った。5回無失点で2-0と勝利。悲願のワールドチャンピオンに、白星を繋いだ。
あれから1年。初球を本塁打にされても、堂々とマウンドに立ち続けた。「1人目の打者だったので苦しかったですけど……。とにかく切り替えて次の打者に向かって、投げていきました」。グッと心を決めた111球で、メジャー移籍後初となる完投勝利を達成した。ドジャースの選手としては2004年地区シリーズのホセ・リマ以来、21年ぶりの偉業。メジャー全体でも2017年のジャスティン・バーランダー以来、8年ぶりの快挙で、歴史に名前を刻んだ。
試合を締めくくると、表情が和らいだ。「うまくいったときは楽しく感じますし、打たれたら悔しいですし……そんな感じです」。野球に答えはない。成功に1歩でも近づくために鍛錬を積み、どんな恐怖にも打ち勝っていく。27歳。まだまだ強くなる。世界地図を広げても見つからない、誰もが届かなかった場所まで辿り着ける。
(真柴健 / Ken Mashiba)