山本由伸が描いた“本当の夢” 怪我と向き合い…異国で自問自答の日々、憧れる「生活」

山本由伸が打ち明けた「憧れた生活」
【MLB】ドジャース 5ー1 ブルワーズ(日本時間15日・ミルウォーキー)
“本当の夢”には、まだ辿り着けそうにない。ドジャースの山本由伸投手は14日(日本時間15日)、敵地で行われたブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズ第2戦の先発マウンドを託された。9回111球で3安打1失点の完投勝利。27歳の弾ける笑顔を見て、異国で戦う強靭なメンタルを感じた。
「この話って……したことありましたっけ?」。パッと目が合ったタイミングで首を横に振ると、慎重に言葉を選んだ“物語”は進んでいった。「去年ね、怪我をしてしまった時に真剣に考えたことがあるんです、僕。『なんでアメリカで生きているんだろう?』って。(リハビリ期間で)自分と向き合う時間があったので『本当は何がしたいのかな』って、ずっと考えていたんです」。
目を輝かせて、少しずつ話は続く。「憧れた生活があるんです。平日に一生懸命、働いて。週末は家族でバーベキューをしながら、みんなでワイワイした団欒の時間がいいなって。今のお仕事だと、全然そうならなさそうなんですけどね(笑)。“ハナキン”(花の金曜日)とかも味わったことない人生ですし」。そう言い切ると、また笑って言う。
「地元の友達に、この話をしたことがあるんです。そしたらですね……。『平日、一生懸命に働くのめちゃくちゃ大変だぞ!』って言われたりね(笑)。『土日は楽しいんでしょ?』って感じで、こっちは冗談を言ったり。みんな色々あるんですよね。大変な中、頑張って生きていく。ジャンルは違うけど、こういう話をしていると『また頑張ろう』って元気がもらえたりしますね」
オリックス在籍時から、煌めく瞬間を幾度となく見せてもらった。昨年は1度も会えなかった。今年3月中旬にロサンゼルスで顔を合わせた時は「本当に来たんですね!」。5月上旬に一時帰国の挨拶をした際は「また、必ずどこかで」。7月に入って、再会した時は「そろそろ来るんじゃないかって思ってたんですよ〜」。8月中旬に再帰国を伝えると「ポストシーズン、絶対に観に来た方がいいですよ。レギュラーシーズンとは、また違った試合が見られると思いますから。ここまで来て最後を観なかったら、後悔しますよ」。
10月初旬、クラブハウスで挨拶するとグータッチ。もちろん、聞きたいことはたくさんある。ただ、躊躇する。「邪魔したらダメだな」という感情が勝つ。そこから深い話は全然、聞けていない。記者としてどうなのか。異国に来てまで、自問自答する。「本当の夢って、何なんだろう……?」。何気なく交わした会話から、1人の人間として大切なことを教わっている気がする。それが「山本由伸」の魅力なのである。
(真柴健 / Ken Mashiba)