阪神ドラ2→戦力外で新天地 3度目の通告も知った“楽しさ”…159キロ右腕、現役への思い

オリックス・小野泰己【写真:北野正樹】
オリックス・小野泰己【写真:北野正樹】

オリ小野泰己は球団施設で練習を続けている

 オリックスから戦力外通告を受けた小野泰己投手が、トライアウトでの現役続行に意欲を示している。

「去年の方が投げていますが、体の状態はプロに入ってから一番、いいと思います。全然、動けます」。通告を受けて1週間後、オリックスの球団施設で小野が笑顔を見せた。

  3度目の“宣告”だった。小野は折尾愛真高(福岡)、富士大を経て2016年ドラフト2位で阪神に入団。プロ2年目の2018年に23試合に先発して7勝7敗をマークし、5年間通算69試合で9勝15敗、防御率4.65の成績を残したが、2022年10月に戦力外通告を受けた。1か月後にオリックスと育成契約を結び、2023年4月には支配下選手登録された。

 ところが、ウエスタン・リーグ最終戦後に行われた社会人との練習試合で左脇腹を痛めて緊急降板し、再び育成契約に。2024年は27試合に登板し、防御率2.08。オフに派遣された豪州ウインターリーグでの8試合連続無失点が評価され、2025年の春季キャンプでは1軍メンバー中心のA組に育成選手としてただ一人選ばれた。

 阪神時代から課題とされてきた制球も「真っすぐがいいんだから、どんどん攻めて行けばいい」という岸田護監督(当時、投手コーチ)や平井正史投手コーチのアドバイスで、腕を振ることに集中。「そこばかり気にしても仕方がないので、出してしまったらゼロに抑えればいい」と切り替えることで、大きく改善することができたほか、球速も最速159キロをマークするまでになった。

 しかし、5月下旬の試合で1回、34球、被安打2、2奪三振、4四死球、自責点5と乱れ、防御率は6.94に。登板機会は減り、7月末の支配下登録期限に吉報は届かなかった。

「少し前から正直、厳しいかなと思っていました。でも、キャンプから状態はよく、今年はいけるかと自信もあっただけに悔しかったですね」と明かす。目標はなくなったが、腐ることはなかった。「支配下の期限が終わってからも投げさせてもらえる。そこは、しっかりと自分のピッチングをしなければいけないと思って、練習にも取り組みました」。人気のない室内練習場の片隅で、ネットピッチを黙々と続け、自分と向き合う姿があった。

「落ち込むことはなかったですね。野球をさせていただけましたし、しっかり来年も野球ができるようにと思っていました。阪神時代もそんな経験はしていますので、そこだけはしっかりとやろうと。周りも気を遣ってくれますから、いつも通りを心掛けました」という。

 現在は、球団施設で調整を続けている。「球団に現役を続けたいと話したら、いろいろ協力してくださるということでした。そこはありがたいですね。今から新しいことを取り入れても意味はないので、今まで通りです。打者と対戦することはできませんが、ブルペンで投げ込み、キャッチボールで強い強度で投げたりしています」

 オリックスに移籍してから「楽しく野球をする」ことをモットーにしている。「そこは変わらずですね。来年どこかでやれるなら、楽しんでやりたいですね」。一般社団法人「日本プロ野球選手会」が主催する「エイブルトライアウト2025」は、11月12日にマツダスタジアムで開かれる。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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