“小柄”な175cm&70kgでも…巨人育成に眠る「ピカイチ」の才能 首脳陣が明かす天性の技術

育成2年目・宇都宮の成長、矢野2軍打撃チーフコーチが説明
2年目の若武者が急成長を見せている。巨人・宇都宮葵星(きさら)内野手は今季、2軍で84試合に出場。ルーキーだった昨年の7試合から大きく出場機会を増やし、打率.289と結果も残した。来季の支配下昇格を見据える21歳の育成選手。見守ってきた矢野謙次2軍打撃チーフコーチが、昨年からの変化とさらなる飛躍に向けた課題を説明した。
巨人2軍は今季、80勝44敗2分けで2年ぶりにイースタン・リーグ優勝。チーム打率.264、542打点、576得点はリーグ1位を記録するなど多くの若手選手が躍動した。四国アイランドリーグplusの愛媛から2023年育成ドラフト3位で入団した宇都宮もその1人。持ち味の俊足を生かしてチームトップタイとなる20盗塁を記録し、7月8日の西武戦(カーミニーク)では公式戦1号を放つなどパンチ力も見せつけた。
昨季は3軍戦で結果を残し、2軍では7試合に出場して12打数4安打で打率.333。今季は84試合で61安打と大きくジャンプアップした。矢野コーチは宇都宮の打撃を「ボールに対しての『当て勘』はピカイチ。物凄くうまい。手先も器用です」と評価。その一方で「うまいがゆえに、器用がゆえに、そこに頼っちゃう」と器用さが欠点になっているとも指摘した。
投球に対してバットを合わせる能力は高いが「バットが先に出て、当てにいってしまう」と強くスイングできていないことを問題視。「元々“タメ”がないスイング。3軍の投手の球なら打てるけど、2軍になると打ち返せない。押されてしまうところがあった」と球威に負けることが多かったという。
今季は「トップの態勢をとって、足で引っ張ってきて、という形ができるようになってきた」とフォームを改善。威力ある球にも力負けしないスイングを身につけ「2軍でも3割近い数字が残せている」と飛躍を遂げた。
支配下登録へ肉体強化と小技の習得を期待
それでも始動時に「バットが寝て入って来るときが、まだある」という。そうなると内角高めへの対応が難しくなり、手打ちになって凡退してしまう。「バットが立って出るようなスイングになると、もっともっとコンタクトの時の力の伝わり方が良くなる。体は小さいですけどホームランを打てる技術、才能も持っている。凄く楽しみな選手です」。
支配下登録に向けて必要な部分で挙げたのは175センチ、70キロの肉体強化。「彼は体がまだ細いので、このオフにトレーニングして力がつくようにやっていくことが大事。しなやかな動きができるトレーニングをしていくことも必要です」。そんな中でもアクセルとブレーキを使い分ける。
「焦りすぎないでいい。急に5キロとか増えると怪我しちゃう。バランスを崩したり、体が硬くなる要因になって怪我しちゃうので、そこは気をつけながら、年相応でいいよという部分も頭に入れながら、バランスを考えながらやっています」
加えて期待するのが小技の習得である。俊足で小技も器用にこなしそうなイメージがあるが、意外にも「うまくはないですね」と分析する。「送りバント、セーフティー、スクイズ、エンドラン……いつでもできますという技術を身につけてほしい。『こうやればうまくバットでつかまるよ』という指導を今やっています」。
一発があり、俊足で小技もできるようになれば、支配下登録も近づいてくる。まだ2年目の21歳。器の大きなマルチプレーヤーへ、夢は膨らむ。
(尾辻剛 / Go Otsuji)