ロングリリーフ→勝ちパのフル回転 DeNA石田裕太郎が忘れぬ1年前「もう行きたくない」

3-2の7回から3番手で登板、3者凡退でCS2ホールド目
■阪神 5ー3 DeNA(16日・甲子園)
DeNAの石田裕太郎投手が16日、甲子園で行われた阪神とのクライマックスシリーズ(CS)、ファイナルステージ第2戦で1点リードの7回から登板。プロ2年間でホールドはわずかに1ながら、3者凡退に封じてCS2ホールド目を挙げた。ファーストシリーズではロングリリーフをこなすなど短期決戦で欠かせない23歳は、昨年メンバー外だった悔しさを胸に、どんな場面でも勝利のために腕を振っている。
石田裕の表情から、チームのために投げられる喜びが溢れ出る。「昨年は全く戦力になれなかったので、今年は僕がチームの力になりたいと思っています」。この日の出番は3-2の7回だった。完全アウェーの敵地で3番手としてマウンドに上がると、坂本を空振り三振、小幡を左飛、高寺を中飛と15球で投げ終えた。
昨年は宮崎県内で行われているフェニックス・リーグにフル参加。チームは3位からCSを勝ち抜いたが、遠く離れた地からタブレットで戦況を見つめることしかできなかった。「自分の中で、そのときの状況だと全然戦力にならないというのがありました。でもその悔しさがあって、もうフェニックスには行きたくないという気持ちで今年やっていたので」と明かすように、今年の短期決戦に懸ける思いは並々ならぬものがあった。
12日の巨人とのファーストステージ第2戦では、先発のジャクソンがまさかの1回5失点KO。2回から登板した石田裕が、4回2安打無失点の好投で流れを引き戻し、最終的には延長11回サヨナラ勝ちでの2連勝突破につながった。この試合では、登場曲に三浦監督が現役時代に使用していた「リーゼントブルース」を流し、降板後にはベンチで誰よりも笑顔で声を出す様子も話題になった。
幼少期から父の“英才教育”を受けた生粋のベイスターズファンは、「ここにいられるのは本当にうれしいことなんです」と笑う。「登板後はケアとかもありますけど、なるべく早くベンチに戻ってみんなの応援をしたい気持ちもあります。今まではスタンドで応援していましたけど、誰よりも近いところにいられる。そういう意味では楽しんでというか、いいプレーがあってもミスが出ても、自分は前向きに明るく振る舞いたいというのは意識しています」と“ファン兼選手”としての心境を明かした。
この日は延長10回サヨナラ負けを喫し、アドバンテージを含めた対戦成績は0勝3敗となり崖っぷちに追い込まれた。日本シリーズ進出への道は、4連勝しか残されていない。それでも「まだ終わりじゃない。とにかく自分が投げるイニングはゼロで。全試合投げるくらいのつもりでいきたいと思います」と石田裕。小さい頃から憧れ続けた三浦監督とともに戦う日々を、まだ終わらせるわけには行かない。
○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。
(町田利衣 / Rie Machida)