シャーザーの“激怒”を「待っていた」 ブ軍監督の人心掌握術…明かした信頼感

シーズンは防御率5.19と不振…ALCS第4戦が今PS初登板
【MLB】Bジェイズ 8ー2 マリナーズ(日本時間17日・シアトル)
ア・リーグ優勝決定シリーズ第4戦が16日(日本時間17日)にシアトルで行われ、ブルージェイズがマリナーズに8-2で快勝。2連勝で対戦成績を2勝2敗に戻した。
本拠地トロントでつまずきブルージェイズは2連敗。乗り込んだ敵地で15日(同16日)の第3戦で投打が噛み合い今シリーズ初勝利を挙げると、劣勢から振り出しに戻す大事な第4戦の先発をジョン・シュナイダー監督はプレーオフの経験が豊富な41歳マックス・シャーザーに託した。
ただ、不安もあった。シャーザーは右手親指の炎症で3か月近く戦列を離れ、17試合で5勝5敗、防御率5.19の成績に終わった。シーズン最後の6登板は防御率9.00で、マリナーズ戦での登板はなかった。「私は人を信じることを大切にしている」と言い続けるシュナイダー監督は、短期決戦での豊富な経験と実績を持つ右腕に懸けた。
2回にソロ本塁打で先制点を奪われたが、以後、ストレート、カーブ、チェンジアップ、スライダー、カットボールを巧みに織り交ぜ、5回2/3を3安打4四球5奪三振2失点と粘りの投球で期待に応えた。
シーズン終盤の不調でヤンキースとの地区シリーズでは登録メンバーから外れ、シャーザーにとってこの日がプレーオフ初登板だった。シュナイダー監督は右腕の気持ちを焚きつける“技”を見せる。4点リードの5回、先頭に安打を許し外野フライで2死を奪った直後だった。マウンドへ歩み寄ったシュナイダー監督に、シャーザーは厳しい表情で「大丈夫だ!」と怒鳴り声をあげ続投を志願した。
「あの状況を切り抜けようと次の打者をどう攻めたらいいか僕はちゃんと分かっていたし、試合がどう流れているかも理解していた。なのに、突然シュナイズ(監督)が出てきた。ボールを渡すつもりなんかなかった。感じよく投げられていたし、アウトを取れるって思っていたしね。ほんの少しやりとりしただけ。あそこで降りたくなかった」
先に会見に臨んだシュナイダー監督が「1年間ずっと、彼がマウンドで私に怒鳴ってくれるのを待っていた。あの瞬間を待っていたんだ」と話せば、会見場の外で待機していたシャーザーは「自分を奮い立たせるための一手だったと思う。実際に結果は出たんだから」と振り返っている。シュナイダー監督の人心掌握術が光った。
3回には、自らの技術で士気を高めた。四球で歩かせた9番・リーバスを一塁牽制で刺し、「走者を置いて2番のローリーを迎えるのと、そうじゃないのとでは大違い。ずっと果敢な気持ちでいられる大きな分岐点だったと思う」とシャーザーは唇を結んだ。
“怒れる右腕”の闘争心に火が付き、主砲ゲレーロJr.に2試合連続の本塁打が出るなど打線が呼応。連日の2桁安打でマリナーズをねじ伏せた。敵地で目覚めたブルージェイズは17日(同18日)に第5戦に臨む。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)