岸田護監督は「いつも助けてくれた」 盟友が忘れぬ感謝…称えた球団の判断「すごく素敵」

入来祐作コーチが語る岸田監督との思い出
DeNAの入来祐作2軍投手コーチ兼アシスタント投手コーディネーター兼投手コーチが、3年間一緒にオリックスの2軍投手コーチを務めた盟友、岸田護監督のAクラス入りを喜んだ。
「お互いにチームを管理する立場とはいえ、監督は僕が想像する以上に大変だと思うのですが、彼は本当に冷静。やるだろうと思っていましたが、素晴らしいですね。オレも頑張らなくてはと思いました」。フェニックス・リーグが行われている宮崎で、入来コーチが真っ黒に日焼けした顔を引き締めた。
入来コーチは宮崎県都城市出身。PL学園、亜細亜大、本田技研から1996年ドラフト1位で巨人に入団。2001年には13勝4敗で最高勝率をマークし、日本ハムに移籍後、メジャーに挑戦しメッツとメジャー契約。傘下の3Aでプレーしたがメジャーでの登板はかなわず、横浜(元DeNA)のテストに合格し、3年ぶりにNPBに復帰した。引退後は打撃投手や用具係を務め、2015年からソフトバンクでコーチを務め、アカデミーでは子供たちを相手に野球の底辺拡大や地域貢献に携わった。
岸田監督との縁は、オリックスの2軍投手コーチに就任した2021年から始まった。岸田監督は履正社高(大阪)、東北福祉大、NTT西日本から2005年大学生・社会人ドラフト3位でオリックスに入団。4年目に2桁勝利を挙げた後、クローザーやセットアッパーとしてブルペン陣を支えた。2019年に引退し、翌年から2軍投手コーチに就任した。
「何も知らない、縁もゆかりもないチームにコーチとして入団させてもらった僕を、彼はいつも助けてくれたんです。投手のやりくりなどだけでなく、彼の野球観もすごく勉強させてもらいました」と入来コーチ。練習や試合はもちろん、遠征先でもいつも一緒。プライベートの時間での話は、深夜に及ぶこともあった。
「例えば、ひとりのピッチャーの指導について、ああでもない、こうでもないと。他愛のない話から野球の深い話、人生のことまでも。隠し事がないくらい、お互いのことを理解し合いながら過ごしていました」と振り返る。年齢は入来コーチが9歳上だが「年の差を感じないというか、兄弟のように仲良くしてもらいありがたかった」と感謝する。NPB復帰の際、恩義のあるDeNAからコーチの就任要請がありオリックスを離れたが、この間、リーグ3連覇や日本一をともに下支えしたのも忘れられない思い出だ。
「岸田護を監督にするという球団の判断が、すごく素敵だなって思った」
岸田監督は、昨年オフに中嶋聡前監督の跡を継ぎ、監督に就任。シーズン途中に1軍投手コーチに立場が変わったばかりだった。経験不足を懸念する声もあったが、入来コーチは「マモ(岸田監督)だったらやれるんじゃないかなと、驚きはしませんでした」と話す。
「最初はいろいろと戸惑うことや、わからないこともあるでしょうけど、彼は勉強をするんです。そういった才能があるんです」といい、「岸田護を監督にするという球団の判断が、僕はすごく素敵だなって思ったんです。野球を発信する能力は当然あるのですが、ずっと一緒にいて彼の人となりが好きだったので、そういう魅力を持つ人間をチームの代表として抜擢するのが素晴らしいなと思いました」と続けた。
「今はDeNAの選手のことで頭の中は一杯です」と言いながらも、気になるのは教え子たちのその後。「松本裕樹(投手)は僕と一緒に(ソフトバンク)ホークスに入ったんです。怪我が多くておとなしい選手でしたが、今やチームを支えるリリーフピッチャーですからね。(オリックス・育成出身の)大里(昂生内野手)も一生懸命練習をしていましたし、(今季2勝目を挙げた)佐藤一磨(投手)も不器用な選手でしたが、才能を伸ばす努力をして頑張っていました。みんなすごいなと思います」と目を細めた。
入来コーチは今季、DeNAで1、2軍を巡回するような形でチームに携わった。「非常に難しい1年間でしたが、すべてが勉強ですから。これからも与えられたところで誠心誠意、選手のために一生懸命、力になれるようにやりたいなと思っています。僕は今、コーチをやらせてもらっていますが、コーチという立場で、選手がいかにやりやすい環境を整えるかってことなので、(現役引退後に)用具係をやらせてもらっていた時と気持ちは変わらないです」。監督就任1年目でAクラス入りを果たした盟友に刺激をもらい、これからも謙虚に選手と向き合い続ける。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)