あまりに辛く長い3時間…すがった「あるよ」の言葉 歓喜の裏でぼう然も気丈な振る舞い

指名漏れとなった青学のヴァデルナ・マイコルフェルガス【写真:湯浅大】
指名漏れとなった青学のヴァデルナ・マイコルフェルガス【写真:湯浅大】

まっさきに退室…手を叩きながら「明日勝とう」

 無常な時間は刻々と過ぎていった。約60人の部員が祈る思いで中継映像を見守るなか、ヴァデルナ・マイコルフェルガス投手(青学大)の名前は最後まで呼ばれなかった。23日に行われた「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で、青学大は3年連続、複数選手の1位指名選手輩出という“快挙”を成し遂げるも、プロ志望届を出した3人のうちヴァデルナは指名漏れとなった。

 中西聖輝投手、小田康一郎内野手と会場の最前列に並んで座り、ヴァデルナは午後4時50分に始まったドラフト中継を見守った。中西は中日、小田はDeNAから1位指名。青学大としては、2023年ドラフトで常広羽也斗投手が広島、下村海翔投手が阪神に。昨年は西川史礁外野手がロッテ、佐々木泰内野手が広島に入団しており、3年連続で複数の1位指名選手が誕生した。

 12球団の1位指名が終わると中西、小田が壇上に上がり喜びの思いを述べる。写真撮影では無数のフラッシュを浴び、応援団から大声援のエールを受けていた。

 ヴァデルナは2位指名以降、会見場と同じ部屋、前から3列目にテレビが置かれた席に座り、名前が呼ばれることを信じて中継映像を見続けた。その間、中西と小田のメディア対応は続いていた。一つの部屋で分かれた明暗。中西、小田は取材対応を終えると、すぐにテレビの前に移り、一緒に願い続けた。

 午後7時3分に支配下選手の指名が終了すると、ヴァデルナは黙って俯いた。重苦しい空気を察し、すぐに自ら「明日優勝しよう」とリーグ戦へ向けて周囲へ声をかけた。休憩を挟んで始まった育成ドラフト。テレビ前の部員は、球団名が告げられるたび「あるよ」などと期待を込めるが、名前は呼ばれず「あぁ……」。同じ東都大学リーグの選手が指名されても、「あるよ」とすがるようにつぶやいていた。

 着々と進む指名。しかし午後8時5分、最後までヴァデルナの名前は呼ばれないまま、全球団の指名が終了。まっさきに席を立ち「明日勝とう」と手を叩きながらいち早く会場から去った。その直後、中西、小田の胴上げが行われた。189センチ、84キロの長身サイド左腕にとって、あまりに辛く、長い3時間だった。

【実際の様子】仲間も俯き…ヴァデルナもぼう然 待ち続けたドラフト指名、“空虚”な会見場

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