中日のドラフト戦略に疑問「見直すべきでは」 投手にも悪循環…OBが指摘した致命的な弱点

中日・井上一樹監督【写真:宮脇広久】
中日・井上一樹監督【写真:宮脇広久】

「先発ローテ可能性十分」な竹丸、打線強化は現有戦力の若手で

 23日に行われた「プロ野球 ドラフト会議 supported by リポビタンD」は、米スタンフォード大の佐々木麟太郎内野手に2球団の1位指名が競合する衝撃的な展開となったが、全体的に有効な指名を行えた球団はどこだったのか──。現役時代に中日、巨人、西武で“強打の捕手”として活躍し、阪神でスカウトを務めた経験もある野球評論家・中尾孝義氏が採点する。

 まずは「1位で単独指名に成功した球団(巨人、楽天、中日、西武、ヤクルト)と、抽選で望む選手の交渉権を獲得することができた球団(ソフトバンク、阪神、ロッテ)は、そこそこ思い通りの指名ができたと言えると思います」と指摘した中尾氏。

 指名された選手の中で、中尾氏が特に高く評価するのは「即戦力なら巨人1位の竹丸和幸投手(鷺宮製作所)、将来性を加味すればロッテ1位の石垣元気投手(健大高崎高)」だ。

 竹丸は広島・崇徳高、城西大、社会人を経てきたキャリア豊富な23歳の左腕。「右打者の内角に食い込むスライダー、外角へのチェンジアップが有効で、1年目から先発ローテを担う可能性は十分あると思います」と中尾氏は見ている。

 巨人は2位の早大・田和廉投手、3位の亜大・山城京平投手を含め、上位3人が即戦力型の投手。主砲・岡本和真内野手のポスティングシステムによるメジャー挑戦を容認しただけに、打線の“穴埋め”をするべきではなかったのかという気もするが……中尾氏は首を横に振り、「主力打者の育成には時間がかかります。1年目から岡本やヤクルト・村上宗隆内野手くらい打てる選手など、いませんよ」と断言。「それよりも、今季は投手成績がよくなかった(チーム防御率は昨季がリーグトップの2.49→今季は同3位の2.95)だけに、即戦力の投手が欲しかったのでしょう。打者は現有戦力の若手の中から育てるということだと思います」と理解を示す。

今季2勝の金丸も「打線の援護あれば2桁勝っていてもおかしくなかった」

 一方、中尾氏が「回転数が多く、ホップ成分の高いストレートが素晴らしい」と惚れ込む石垣を指名したロッテは、今季パ・リーグで最下位に沈み、サブロー新監督が誕生したばかりだ。「おそらく石垣を1年目から1軍でバリバリ投げさせるつもりはないでしょう。チーム自体、長い目で見ながら強化していくつもりだと思います」と指摘する通り、3位でも横浜高のエース・奥村頼人投手、4位では高校通算49本塁打の昌平高・櫻井ユウヤ内野手と、将来性豊かな高校生を指名した。

 今季セ・リーグ覇者の阪神は、アマチュア球界ナンバーワンスラッガーと目されていた創価大・立石正広内野手を、3球団競合の末に1位指名した。守備位置は二塁か三塁。二塁は中野拓夢内野手、三塁は佐藤輝明内野手がガッチリ固めているのが現状だが、佐藤輝の将来的なメジャー志向などを踏まえ、“一歩先”を視野に入れての指名と見られる。

 中尾氏は「1年目に関しては、佐藤輝を外野に戻して立石に三塁を守らせるのか、それとも走力も高い立石を外野へ持っていくのか……いずれにせよ、阪神がこれだけ打線強化に専念できるのは、投手陣は非常に充実している今(今季チーム防御率は12球団トップの2.21)だからこそだと思います」と指摘する。

 中尾氏が思わず首をかしげたのは、古巣の中日の指名だった。青学大・中西聖輝投手を1位指名したのをはじめ、2位で東北福祉大・櫻井頼之介投手、3位で四国アイランドリーグplus徳島・篠崎国忠投手と上位3人を即戦力型の投手が占めた。

 今季は就任1年目の井上一樹監督が3年連続最下位のチームを4位に引き上げたが、打線はリーグワーストの403得点、チーム打率.232に終わったとあって、「いくら主軸打者を育てるのが難しいとは言え、ここは野手を補強してほしかった。期待の石川昂弥内野手も伸び悩んでおり、育成システムを含めて見直すべきではないでしょうか。というのも、“貧打”は投手陣にも影響を及ぼします。ドラフト1位ルーキーで今季2勝(6敗、防御率2.61)の金丸夢斗投手も、打線の援護さえあれば、2桁勝っていてもおかしくない内容だったと思います」と苦言を呈した。

 佐々木麟太郎の交渉権を獲得したソフトバンクにも、来年5月の米大学リーグ戦が終了するまで交渉できないなどマイナスポイントがある。“本当の答え合わせ”は、少なくとも数年を要することになる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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