2度目の戦力外、井口和朋が感じていた「予感」 新天地で目指した“役目”「何をすれば助かるか」

井口和朋がトライアウトに向け調整、オリックスでの2年間に感謝
オリックスから戦力外通告を受けた井口和朋投手が、大阪の球団施設で2度目のトライアウト挑戦に向け調整を続けている。「今年もありそうだな、という予感はありました。今はNPBと台湾、韓国を視野に入れトライアウトを受けようと思っています」。井口が静かに口を開いた。
井口は武相高(神奈川)、東農大北海道オホーツクから2015年ドラフト3位で日本ハムに入団。2021年には43試合に登板し、防御率1.86。2022年は23試合で防御率5.18、2023年も5試合の登板にとどまり、オフに戦力外通告を受けた。トライアウトを経て、育成選手として2023年にオリックスに入団。キャンプ、オープン戦でアピールし、開幕直前に支配下登録を掴んだ。
2024年は32試合に登板し、1勝2敗、3ホールドとブルペン陣を支えたが、今季は5試合に登板し、防御率9.64。ウエスタン・リーグでは40試合に登板し防御率1.00だったが、1軍のマウンドで結果を残すことができなかった。
「僕はファームで結果を残すことを求められてはいません、年齢的にも。2軍で結果を出したから(戦力外から)逃れられるとは思っていませんでした。1軍と2軍との結果に大きな差がついてしまったのが、今年の課題でした」と井口は振り返る。
「オリックスにきて2年目で守りに入ってしまったわけではないのですが、そのような感じになってしまった部分もあったかなと思います。毎年、しっかりと打者に対して戦いにいけるようなメンタルがあったらいいなと思います」と反省を込めつつ心境を明かす。手を抜いたのではなく、数少ない1軍登板のチャンスを生かそうと思うあまり力を発揮することができなかったという側面もあった。
2年間過ごしたオリックスについて、井口は「一番うれしかったのは支配下に上がれたことですね。ヒーローインタビューもさせてもらったし、いろんな新しい人と交われたというのが、僕の中ですごくいい経験になりました」と語る。「新しい環境が新たな自分を作ってくれた」と話したこともあった。
「ブルペンの中で年齢も上の方になったので、自分の言動を見直しました。自分のことだけを考えるのではなく、どうやったらチームの力になれるかと。周りを見てチームのことを第一に考えるということをすごく意識しました」。何より、中継ぎに誇りを持って投げ続けた。「僕がチームのためになれるのは、先発投手がすごく難しい場面を残して降板したとき。1度クビになって、死んだ自分にもう1回チャンスを与えてくれたこのチームで、何を求められているのか。何をすればチームが1番助かるのかを考えた時、僕はそこかなと思いました」と言い、自らを「便利屋」と公言した。
11月12日のトライアウトに向け、オリックス球団の理解を得て3、4日に1度の間隔でピッチングと、打撃投手を務めている。10月27日には強い球を投げ込んで、打者のバットをへし折る場面もあった。
「トライアウトから逆算して、ピッチングで強い球を投げ、打撃投手をして打者との感覚を忘れないようにしています。1年間、ファームで崩すことなく投げ続けられたことが収穫。いろんな経験をさせてもらった2年間を次の場所でも生かして、どんどん勝負していきたいと思います」。来年1月7日に32歳を迎える右腕は口元を引き締め、前を向いた。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)