大谷翔平をなぜ続投させたのか? 専門家が断言した「敗因」…延長18回総力戦の代償

マウンドから降りるドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
マウンドから降りるドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

救援のバンダ、トライネンが痛打され致命的な一挙4失点

【MLB】Bジェイズ 6ー2 ドジャース(日本時間29日・ロサンゼルス)

 ドジャースは28日(日本時間29日)、本拠地で行われたブルージェイズとのワールドシリーズ第4戦に2-6で敗れ、2勝2敗のタイとなった。先発のマウンドを託された大谷翔平投手は、6回まで2ラン1発による2失点に抑える“粘投”を見せた。しかし、7回無死二、三塁のピンチを招いて降板すると、救援投手が打たれ、結局6回0/3、4失点で敗戦投手となった。

「はっきり言って、敗因は7回に大谷を続投させたことだと思います」。こう断言するのは、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏だ。

「この日の“投手・大谷”は、コンディションが十分でなかったと思います。160キロ台を計測した球が1球もなく、前回登板(17日のリーグ優勝決定シリーズ第4戦)で、打っては3本塁打、投げては6回10奪三振無失点と大活躍した時と比べると、明らかに球威がありませんでした」と指摘。それも無理はない。

 前日27日(同28日)のワールドシリーズ第3戦は延長18回、試合時間6時間39分の死闘となった。「1番・指名打者」でフル出場した大谷は、4打数4安打2本塁打5四球の大車輪の働きで、全9打席出塁。一夜明けたこの日、疲労が残っていないはずがなかった。

「大谷本人も、コンディション不良は十分自覚しながらの投球だったと思います。前回登板は基本的にフォーシームで押し、だからこそスライダー、スプリットなども効果的でしたが、今回はスライダー頼みの投球になっていました」と新井氏。

 3回にはブルージェイズの看板選手ブラディミール・ゲレーロJr.内野手に、真ん中高めのスライダーを左中間席へ2ラン本塁打される。それでもスライダーやカーブを駆使して粘り、4回先頭から5回先頭まで4者連続三振に斬って取るシーンもあった。

投手交代を告げるドジャースのデーブ・ロバーツ監督【写真:ロイター】
投手交代を告げるドジャースのデーブ・ロバーツ監督【写真:ロイター】

前日に10投手起用「調子のいい投手ほど長いイニングを」

 6回を投げ終えた時点で、投球数90、4安打2失点。「ここで『お疲れ様!』と降板させておけばよかった」と新井氏は見たが、デーブ・ロバーツ監督は1点ビハインドの7回も、大谷に続投を指示した。大谷は2年ぶりに投手復帰を果たした今季、レギュラーシーズンでも14試合に先発し、最長でも6回までしか投げていなかった。

 問題の7回、大谷が先頭打者に156キロのストレートを右前打され、次打者にも154キロを右中間フェンス直撃二塁打されたところで、ようやく2番手の左腕アンソニー・バンダ投手にスイッチ。「この回の頭から代えておくべきだったと思います。無死二、三塁のピンチで登板させられて、点を取られるなと求められるのは、バンダにとって酷だったでしょう」と新井氏は惜しむ。

 バンダは最初の打者に適時打を許し、内野ゴロの間にも追加点。さらに3番手としてマウンドに上がったブレイク・トライネン投手も連続タイムリーを浴び、この回に致命的な4点を奪われたのだった。

 継投に失敗したロバーツ監督にも、苦しい事情はあった。前日の激闘で10人の投手を起用。新井氏は「調子のいい投手ほど長いイニングを投げさせてしまっていて、短いイニングで済んでいたバンダ(前日は打者1人、無安打無失点)、トライネン(前日は打者4人、3安打1失点)をやむなく投入したのでしょう」と察する。

「不振のリリーフ陣の中でも、特にトライネンはもはや、ロースターから外すべきではないでしょうか。決して甘いコースに投げているわけではないのですが、内角の難しい球をいとも簡単に打ち返され、外野の頭を越されるなど、抑えられる球が見当たりません」と新井氏は指摘する。

 レギュラーシーズン後半から、リリーフ陣はドジャースのアキレス腱となっている。ワールドシリーズ全体の明暗を分けるポイントになりかねない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY