大谷翔平に起きた“異変” 色濃く残った激闘の余波…専門家指摘「シャープさがない」

2020年サイ・ヤング賞ビーバーと対戦「シャープさがなかった」
【MLB】Bジェイズ 6ー2 ドジャース(日本時間29日・ロサンゼルス)
ドジャース・大谷翔平投手は28日(日本時間29日)、本拠地で行われたブルージェイズとのワールドシリーズ第4戦に投打同時出場。打者としては3打数無安打2三振1四球でシリーズ初の無安打に終わった。延長18回の激闘となった前日の第3戦で、4打数4安打2本塁打5四球の超人的な活躍を演じた後だけに注目されたが、打出の小槌かと思われたバットに何が起こっていたのだろうか。
「全体的に疲労を感じさせる打撃内容でした」。大谷の4打席をこう振り返るのは、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏だ。特に疲労が色濃く表れていたのは、1点ビハインドで迎えた5回1死走者なしでの第3打席だったという。
相手投手はインディアンス(現ガーディアンズ)時代の2020年にサイ・ヤング賞を獲得した実績を持つ右腕シェーン・ビーバー投手。カウント0-1から、大谷は内角高めの147キロのストレートをファウルにした。
「実は前日に、相手の(マックス・)シャーザー(投手=こちらもサイ・ヤング賞3回を誇る右腕)から本塁打を放ったのと同じような球でした」と新井氏は指摘する。確かに前日、3回に迎えた第2打席でシャーザーにカウント1-2と追い込まれながら、153キロを計測したインハイのボール球気味のストレートを右翼席へ運んでいた。
「前日にホームランにした球を、むしろスピードはシャーザーの方が速かったのに、ファウルにしてしまった。私はこれを見て、体やバットの動きに前日ほどのシャープさがないのかな、と感じました」と語る。結局、この打席は3球目の外角いっぱいのナックルカーブを見逃し、3球三振に倒れた。

「とてつもなく高い技術が凝縮されていた」改めて前日の1発に驚き
逆に言えば、前日にシャーザーのインハイの球を右翼席に運んだ本塁打は、「とてつもなく高い技術が凝縮された1発だった」と今でも絶賛が止まらない。「普通なら打ってもファウルになるはずの球です。ところが、締めた左肘を、左腰にこするように動かしながら、バットのヘッドを遅らせ、内角の厳しいコースの球をとらえました。プロの世界の技術の高さを知る者ほど、あの本塁打のすごさに驚かされたと思います」と振り返る。
とすれば、前日の試合で大谷が2本塁打2二塁打をマークした後、第5打席以降は4敬遠を含む5四球で、相手が逃げの一手となってしまったのも無理はなかったかもしれない。ちなみに、この日の初回の第1打席もビーバーから四球を選び、前日から6打席連続四球。異常警戒は続いていた。
そんな“超人”大谷をもってしても、前日の6時間39分に及ぶ試合にフル出場し、全9打席に出塁。一夜明けたこの日は投手としてマウンドにも上がり、さすがに疲労と無縁ではいられなかったようだ。チームも2-6で敗れ、2勝2敗のタイとなった。
仕切り直しとなる29日(同30日)の第5戦。相手先発は既に第1戦で対戦しているトレイ・イェサベージ投手で、再び大谷のバットが火を噴く可能性は高いと言えそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)