指名漏れ→ゴールドマン・サックス就職、慶大4番の素顔 意識した“黄色ずくめ”

慶大・常松は大学生活最後の早大2回戦に出場も3打数無安打で交代した
プロ志望届を提出し、ドラフト会議では無念の指名漏れとなったが、米金融大手「ゴールドマン・サックス」に就職することが発表されて世間の度肝を抜いた男が、大学生活最後の公式戦に臨んだ。慶大の常松広太郎外野手(4年)。2日に行われた東京六大学野球秋季リーグの早大2回戦に「4番・右翼」で出場するも3打数無安打で、9回の打席は代打・坪田大郎捕手(4年)に譲る形となった。チームは0-3で敗れ、今季全日程を終えた。
「指名されなかったのは残念ですが、東京六大学の素晴らしい環境で4年間を過ごさせていただいて、次の進路で頑張ることが恩返しになると思っています。行く先々で活躍できる下地をつくってくれている六大学へ、還元できるように頑張ります」。大学野球を終えた常松は、こう気持ちを切り替えていた。
184センチ、89キロの均整のとれた体で繰り出す豪快なスイングが最大の魅力だ。小学3年から6年まで、親の仕事の都合で米ニューヨーク州に住んだ。中学入学に合わせて帰国し、神奈川・慶応湘南藤沢の中等部、高等部で野球部に所属。そして慶大進学後も、前年(2021年)に春秋連続優勝していた野球部に身を投じた。
1、2年生の時はリーグ戦出場がなかったが、3年春にデビュー。今春の開幕前には打撃が急成長し、レギュラーの座をつかんだ。開幕カードの立大2回戦でリーグ戦初アーチを含む2本塁打を放ったのをはじめ、シーズンを通して全14試合に出場し、打率.281、3本塁打、10打点の好成績を挙げたのだった。
プロ志望届を提出して臨んだ大学最終シーズンの今季は、開幕4番に抜擢されたが、打撃不振でベンチから外されたこともあった。10月20日の立大3回戦で左翼ポール際へ今季1号ソロを放ち、復活を印象付けたが、3日後のドラフト会議で名前を呼ばれることはなかった。NPB通算525本塁打の清原和博氏の長男で、昨年慶大で4番を務め、背番号も今年の常松と同じ「3」を付けていた清原正吾さん同様、指名漏れを受けて本格的な野球に別れを告げることになった。

「英語には自信があります」「日本の株を海外の機関投資家に売る仕事」
同30日には、慶大野球部が4年生部員の進路をホームページで発表。一流企業が並ぶ中で、ひときわ目を引いたのが、常松の「ゴールドマン・サックス」だった。常松は今季新たに、中央付近から先端へかけて黄色く塗装されたバットを使用し、肘当てと脛当ても黄色で統一していた。
「実は、ちょっとゴールドを意識した色で、(ゴールドマン・サックスの)社員さんにもそういう話をしてあって、わかりやすいようにと思いまして……。(慶大の)チームメートは全員知っていました」と少しいたずらっぽい笑みを浮かべながら明かした。さらに「僕がもともと(チームカラーが黄色の)阪神タイガースのファンという意味もありました」と付け加えた。
子どもの頃に米国生活を経験したとあって、「英語には自信があります」とうなずく。「(ゴールドマン・サックスで)現在予定されている仕事は、グローバルマーケッツという部門で、日本の株を海外の機関投資家に売る仕事です」と説明する。
プロ野球に勝るとも劣らない厳しい世界だろうが、周囲を笑顔にする明るさと、怒涛のバイタリティーが、頼れる武器になりそうだ。阪神タイガースの黄色を纏う夢はかなわなかったが、将来はゴールドに輝いている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)