プロ1年目にTJ手術、東山玲士が見据える復活 31球で待っていた悪夢も「乗り越えたい」

オリックス・東山玲士【写真:小林靖】
オリックス・東山玲士【写真:小林靖】

ドラフト5位・東山玲士が下した決断「自分の人生」

 入団1年目にトミー・ジョン手術(TJ)を受けた、新人右腕の東山玲士投手が球団への感謝の思いを胸に育成選手として再スタートを切った。「何の実績もない自分に手術を受けさせてくださり、球団には感謝しかありません。進化した姿で復帰し、この恩を返したいと思います」。寒風が吹き抜ける季節を迎えた球団施設の舞洲で、東山が口を開いた。

 東山は香川県坂出市出身。丸亀高、同志社大、ENEOSから2024年ドラフト5位でオリックスに入団。最速151キロのストレートとチェンジアップを武器にする右腕の評価は高く、オープン戦では本拠地2戦目の3月5日の楽天戦で2番手として登板。1回を19球、被安打0、2奪三振、1与四球、無失点と好投しデビューを飾った。異変が起きたのは、3日後の巨人戦だった。5番手で登板し、打者3人を12球(被安打0、2奪三振、無死四球、無失点)で仕留めたが、右肘に“ピシッ”と違和感を覚えたという。

 検査を受け、約1か月半後に炎症が収まりキャッチボールを再開したが、再び痛みが出たことで温存療法とTJ手術の話が持ち上がった。入団したばかりで、オープン戦でまだ31球しか投げていない新人に、復帰まで1年以上かかる手術は重すぎる決断だった。

「だいぶ悩みました。家族にもスカウトの方にも相談しました。温存療法も考えたのですが、10年、15年先を見据えて決めました」。25回目の誕生日を迎えた5月5日、トレーナーを通じて球団にお願いし、19日にTJ手術を受けた。

 東山に後悔はない。「最後は自分の人生。(手術をしないと)言い訳をつくっちゃうなとも思って。やるなら自分が納得するタイミングでとも思いました」。チームメートには岩嵜翔投手や山崎颯一郎投手、椋木蓮投手らTJ手術から復活し活躍している先輩が多く、宇田川優希投手や小木田敦也投手、吉田輝星投手ら手術からの再起を目指す選手もいる。

 東山が手術した翌日には、前佑囲斗投手もTJ手術を受けた。「どこかで(壁に)ぶつかるでしょうが、その時は先輩方の話を聞いて乗り越えたいと思います」と前を向く。

 リハビリは順調に進んでいる。9月末からネットピッチングを始め、キャッチボールの距離も塁間まで伸びた。それでも日々、肘の状態は違う。寒さも影響し、痛みが出ることもある。「一歩進んで、二歩下がるという時もあります」と話す東山に暗さはない。

「大きく変えるつもりはありませんが、肘に負担がかからないフォームをしっかりとつくりたい。せっかく1年もあるのですから、どれだけ成長できるか楽しみなんです」。来年5月の実戦復帰を目指し、一歩一歩着実に歩みを進めていく。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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