廣岡大志「レギュラーだという自覚はない」 躍進も“猛省”のワケ…オフに向き合う苦しさ

3球団目で内外野こなしキャリアハイの102安打
10年目で初めて規定打席に到達したオリックスの廣岡大志内野手が、来季もレギュラーを確保するために「考える時間」を大切にしている。
「まだ終わってないです。12月31日までなんで、僕の1年は」。今シーズンを振り返ってほしいという質問に、廣岡が真顔で答えた。
廣岡は大阪市出身。智弁学園(奈良)から2015年ドラフト2位でヤクルトに入団。広角に打ち分け長打力も秘める打撃と内外野を守れるユーティリティプレーヤーとしてだけでなく、ひたむきにボールを追うプレースタイルにも評価は高い。巨人へ移籍後、2023年途中にトレードでオリックスに移り、3年目の今季はヤクルト時代の91試合(243打席、打率.203)を上回る118試合(453打席、同.254)に出場した。
残した数字以上に、チームのAクラス入りに貢献した。本塁打7本のうち、4本が先制本塁打で、2本が先頭打者。5月14日の日本ハム戦(エスコンフィールド)では8回に逆転の満塁弾、8月17日の西武戦(京セラドーム)では延長12回にサヨナラ本塁打を放った。ファンの記憶に残る打撃が多い1年でもあった。
「初めて規定打席に乗って、充実したシーズンでした。試合に出る、出ることができる喜びを感じました」と振り返った廣岡にとっての反省は、シーズンを通して試合に出られなかったことだという。交流戦で相手野手と交錯して右肋骨を骨折し、約1か月間、戦列を離れた。
不可抗力の怪我でもあったが「それでも、怪我は怪我なんで。1年間、やり切るというのが毎年の目標。そこが一番大事だと思っています」。レギュラーに大きく近づき、プロ入り以来、掲げてきた大きな目標を果たすことができる可能性が高かっただけに、落胆も大きかったのだろう。
廣岡は今、若手主体の秋季キャンプ(高知市)には参加せず、球団施設の舞洲で育成選手ら残留組の若手に交じり、汗を流す。練習メニューは任されているそうで、廣岡は「考える」をテーマに掲げている。
「試合に出続けることが初めてだったんで、調整の仕方を学びましたし、いろんなピッチャーを見ることができたので、それを次にどう生かすか。来年が大事なんで、どういう取り組みをするのかということを考えるのが、今の仕事かなと思っています」。多くの打席を経験して打者としての“引き出し”が増えたことで、考えるレベルもこれまで以上に高くなった。「そういうこと(経験)が今までなかったんで、考えている時間がすごく大事だと思っています」
「レギュラーだという自覚はありません。今年はそうやったかもわかりませんが、来年はまた横一線です。そこをもう1回、取りに行けるようにと思います。だから、オフだけどオフじゃないんです。そこはオフの苦しさじゃないですか。選手にはみんなその思いはあると思いますよ」。おごることなく、冷静に足元を見つめる。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)