背負い続けた“ドラ1”の重圧 遮断したSNS…繰り返した自問自答「野球をやめたら何が残る」

トライアウトに参加した元西武・渡部健人、元ソフトバンク・風間球打、元阪神・森木大智(左から)【写真:小林靖】
トライアウトに参加した元西武・渡部健人、元ソフトバンク・風間球打、元阪神・森木大智(左から)【写真:小林靖】

トライアウトにソフトバンク・風間、阪神・森木、西武・渡部が参加

 毎年12人しか選ばれないドラフト1位は大きな期待の証である一方で、好結果を出さないとそれがプレッシャーになることもある。12日にマツダスタジアムで行われた「エイブル トライアウト2025」には、3人の“元ドラ1”が再びNPBでの居場所を求めバットとグラブを握った。

 参加したのはソフトバンク・風間球打投手、阪神・森木大智投手、西武・渡部健人内野手。風間はこの日、最速は140キロ前半。それでも打者3人に対し、2つのゴロアウトを奪った。「球速が出ていなかったですけど、自分の中では少しは良かった」と振り返った。

 ノースアジア大明桜時代は最速157キロをマークし剛腕として名を馳せた。ソフトバンクは早々に1位を公言し、1本釣り。背番号「1」を託されたが、その後は怪我にも苦しみ3年間で1軍登板ゼロ。昨季は育成契約で1年を過ごした。

 ドラフト1位入団も1軍出場ゼロ。「戦力になれなかったのは申し訳ない」とチーム、ファンに謝罪した。一方で、高い期待を背負っての入団のプレッシャーは大きかった。「(SNSを)見ないようにはしていましたけど、結果を出さないと叩かれる。注目していただいている分、難しさも正直ありました」と話す。「何をやっているんだろうって……」。葛藤を漏らした。

 そんな風間と同年のドラフト1位で入団した森木は最速149キロを計測し、1安打1四球を許したものツーシームを投じるなど、存在感を示した。ドラフト1位のプレッシャーは「全くなかった。自分の実力なので」。そう受け止めていた。

トライアウトで本塁打を放った元西武・渡部健人【写真:小林靖】
トライアウトで本塁打を放った元西武・渡部健人【写真:小林靖】

渡部が語った苦悩「本当に野球がなくなったら何ができるんだろう」

 3人の中で一番のインパクトを残したのは西武・渡部だった。第1打席で日本ハムの石川から左翼上段へ特大の一発。持ち前のパワーを披露し、8打席で1本塁打1四球で終えた。「悔いなくやることができました」と胸を張った一方で、語ったのは自問自答だった。

「(野球以外の道は)全く頭にないんですよね。だからどうしようと思っていて。何ができるんだろう自分ってずっと思っている。それを考えて練習していて、ずっと今日を迎えたんですけど。何ができますかね?(笑)。わかんないんですよね。ずっと野球しかしてこなかったので」

 2020年ドラフト1位で西武に入団した渡部は2023年に57試合に出場し、6本塁打をマーク。しかし昨季はわずか11試合で打率.030、今季は1軍出場ゼロに終わり戦力外を受けた。

「ずっと不安でしたね。大丈夫かなみたいな。本当に野球がなくなったら何ができるんだろうって考えていました」

 一生背負い続ける“元ドラ1”の肩書きは、時には重い十字架ともなる。それでも、3人は再びユニホームに袖を通すために、諦めてはいなかった。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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