富山凌雅が“変幻投球”に手応え「嫌だと思う」 TJ手術から復活へ…受け入れたコーチの提案

サイドスローにも挑戦しているオリックス・富山凌雅【写真:北野正樹】
サイドスローにも挑戦しているオリックス・富山凌雅【写真:北野正樹】

7年目左腕の富山が上手投げと横手投げを織り交ぜる投球に活路

 オリックス7年目の富山凌雅投手が、高知市での秋季キャンプでサイドスローに挑戦している。トミー・ジョン手術(TJ)から復帰後の2年間、思うような成績を残せなかった左腕が、上手と横手からの変幻自在のフォームで輝きを取り戻そうとしている。

「打者の反応がよくて、思いのほか楽しかったですね。キャッチャーも『嫌だ』と言っていましたし。使えるんじゃないかと思います」。初のライブ打撃に登板した12日、富山が声を弾ませた。

 富山は和歌山県出身。九州国際大付高、トヨタ自動車から2018年ドラフト4位でオリックスに入団。3年目の2021年には左打者へのワンポイントリリーフとしてチームトップの51試合に登板し、25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。

 しかし、翌年9月に左ひじのTJ手術を受け育成選手に。2024年3月に支配下復帰したものの1軍登板は16試合にとどまり、今季は5試合に登板しただけで大半を2軍で過ごした。ウエスタン・リーグでは32試合に登板し防御率4.91。「来年のことはあまり考えずにやっていた1年でした、いろんな意味で。今年は崖っぷちを一番意識しましたね。育成になった時は思わなかったのですが」と振り返った。

 2年連続して結果を残せなかった理由を、富山は「技術じゃなく、気持ちの問題でした」と明かす。「TJ手術をして、どこかで逃げている自分がいたんです。抑えていた時にどういうピッチングスタイルだったのかを見つめ直すことができました」。4年前は打者に対し強気な攻めをみせる自分がいた。

 秋季練習の面談で、厚澤和幸1軍投手コーチから「左打者が嫌がることをやってみようか」と提案を受けた。本来はスリークォーター気味の上手投げだが、キャッチボールなどでは遊び感覚でサイドからも投げていた。「横からも投げられますから、たまに投げてもいいなと。来年以降やっていくために何かを変えていかないとダメなんで。ずっと同じスタイルでいけるピッチャーなんて、そういないですし」。決断に時間はかからなかった。

岸田監督も見守る挑戦「試行錯誤をしていけばいい」

 打者と対戦したライブ打撃では、右打者には上手と横手を織り交ぜ、左打者にはすべて横手から投げるなどして、打者の反応を確かめた。「打者は(上と横の)どっちで投げてくるんだろうというのもありますし、多分、嫌だと思います。サイドから投げると球速は落ちるかもしれませんが、球速よりボールのキレと遅い変化球の緩急も生かせると思います」と手応えを語る。

 岸田護監督は「まだやり始めたばかりなんですが、まあまあ投げていたんじゃないですか。打者の反応や投げた感覚、どの球が使えるか使えないかなど、投げていかないとわからないことがあります。ここから試行錯誤をしていけばいいと思います」と、富山の新たな挑戦を温かく見守る。

「これから上と横の(投げ分け)の割合や、横で投げる時のクセなども出てくると思うのでそういうのを見つけながらやっていきたいと思います」。初の実戦は、17日にキャンプ地で行われる中日との練習試合。「味方打者が相手ではないので、どんどん攻めていきます」。上と横の“二刀流”で打者に向かう闘争心を取り戻した富山。名前のように打者を「凌駕」し、再びマウンドで輝く日を目指す。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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