育成3年で届いた吉報 入山海斗が子どもたちに伝える“夢”…「まだ足りない」

オリックス・入山海斗【写真:北野正樹】
オリックス・入山海斗【写真:北野正樹】

入山海斗、「夢先生」での登壇が内定

 プロ3年目の今季に支配下選手登録され、セットアッパーとして2勝を挙げてチームのAクラス入りに貢献したオリックスの入山海斗投手が、12月に大阪府内の学校を訪れ夢を諦めない大切さを伝える。「楽しく、諦めずにコツコツとやれば夢は叶う、ということを話したいですね」。プロ野球選手会が企画した「夢先生」で登壇することが内定した入山が頬を緩めた。

 入山は大阪府守口市出身。日高高校中津分校(和歌山)、東北福祉大から2022年育成ドラフト3位でオリックスに入団した。小学3年で野球を始めたが、苦しいことが多かった15年だった。「試合に出られたのは高校だけ。小中学校、大学は全然ダメでした」と振り返る野球人生。大学では層の厚さから、リーグ戦は1年秋に1試合に登板しただけ。「1イニング、被安打0、2奪三振、無四球、無失点」が4年間のすべてだった。

 それでも、小学生時代、父に連れられて通った京セラドームで観たオリックスの一員になれたのは、大学4年の春季リーグの前に浴びせられた大塚光二監督(当時)の「もっとちゃんと練習しろ」の厳しい一言。「自分では練習をしているつもりでしたが、まだまだ足りないのだと気付かされました」と、練習に取り組む姿勢を改めた入山のストレートを、オリックスのスカウトは見逃さなかった。

 26年ぶりの日本一に輝いたオリックスから指名された入山は、日本シリーズで活躍した投手陣に刺激を受け「緊迫した場面で任される投手になりたい」と意気込んだ。1年目にウエスタン・リーグで44試合に登板し5勝3敗13ホールド、防御率2.36と結果を残し、2年目も39試合に登板したが支配下登録の声はかからなかった。

「2年で辞めよう」と決意した入山を、今度はチームメートが「まだやれる」と前を向かせ、背中を押してくれた。「今年でダメなら辞めようと思ったから、楽しくやろうと開き直りました」という3年目の7月の練習試合後、いきなり支配下選手登録を告げられた。登録期限まであと1日だった。2軍戦の成績は14試合登板で0勝1敗、防御率3.60と、1、2年目を上回るものではなかったが「パワーピッチャーがほしい」という1軍の要望で、球威のあるストレートと鋭く落ちるフォークが武器の入山が、横山楓投手とともに支配下選手への切符をつかむことができた。

 1軍では8月14日の楽天戦(京セラドーム)でデビュー。15試合に登板し2勝0敗1ホールド、防御率5.02。好不調の波はあったものの、9月22日のソフトバンク戦(みずほPayPayドーム)で0‐0の7回、2番手として登板し打者3人で仕留めるなど、チームの勝利に貢献した。

 11月18日に行われた契約更改では、育成時代の240万円から1000万円(金額は推定)に大幅増を勝ち取り「釣りが趣味なので、いいリールや竿を買いたい」と笑顔をみせた。「夢を諦めかけたこともありましたが、いろんな人に支えられて立ち直ることができました。運もありますが、コツコツとやっていればいいことがあります」。紆余曲折の野球人生は、子どもたちの心に響くはずだ。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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