失点「71」増加で逆襲の守備革命 「外野は外野だけ」は終わり…若きコーチ陣が奮闘

オリックス・山崎勝己バッテリーコーチ【写真:北野正樹】
オリックス・山崎勝己バッテリーコーチ【写真:北野正樹】

山崎勝己バッテリーコーチが担当

 岸田護監督が就任1年目の今季、Aクラス入りを果たしたオリックスのコーチ人事は、1、2軍の垣根を撤廃。来季は波留敏夫2軍監督の1軍ヘッドコーチ就任など、内部の小規模な異動で組閣を終えた。その中で新たなチーム方針として示されたのが、ディフェンス担当の新設だ。

 11月6日から20日まで、高知市の東部球場で行われた秋季キャンプ。メイン球場やサブグラウンドで、ディフェンス担当を兼務する山崎勝己バッテリーコーチが投手陣と内野陣を集め、バント処理やけん制、投内連携などの練習内容を指示する姿が連日見られた。練習には齋藤俊雄総合コーチや比嘉幹貴投手コーチ、安達了一内野守備走塁コーチのほか、松井佑介外野守備走塁コーチが加わることもあった。

 これまでは投手の守備は投手コーチが、野手は内外野のコーチが個別に担当してきたが、このキャンプからは山崎コーチが主導して各コーチと課題点を洗い出し連携したメニューを考えるようになった。

「1年間やってみて、みんなで1点を守ろうという認識がちょっと薄くなっていると感じたので、その意識を高めるためですね」。ディフェンス担当の狙いを、山崎コーチはそう語る。

「例えば、ランナー二塁で外野にタイムリーを打たれてホームでセーフになると、クローズアップされるのは外野手の送球やチャージになります。でも、それ以前にできることがあるんです。二遊間(の野手)が走者を引き付けたり、キャッチャーからのピックオフでリードを取らせず一歩でも(スタートを)遅らせたり。一、二塁ではファーストがいかにランナーを引き付けるかとか、そういったところです。ピッチャーもそこに参加してもらってけん制の練習もしなくてはいけません」

 各コーチの年齢が比較的近いことも、新たな試みを容易にしている。43歳の山崎コーチを筆頭に、比嘉コーチ42歳、松井佑コーチ38歳、安達コーチ37歳と気心も知れた若い指導者で、遠慮なく意見を出し合える仲でもある。「外野は外野だけでなく、より話すことが増えました」と山崎コーチ。

 今季のオリックスは、打率が昨季より1分7厘アップの.255(リーグ2位)、本塁打も29本増の100本(同3位)、打点も98点増の488点(同3位)と打撃は改善したが、失点は519点と71点も増えた。岸田監督は「ディフェンスは当然大事なこと。どうやって1点を防いでいくかというところには、いろんな要因がありますからそれを1個1個つぶしていくということですね。計画を練ってやってくれたので、選手もすごくわかりやすかったと思います」と新たな試みを評価した。

 山崎コーチは「秋季キャンプでは、(戦術的に)これは使えるね、これはちょっと厳しいねというのがあぶり出せたと思います。春のキャンプでもこれを打ち出してチームとして守りの部分を強化していけたら、総合力はアップできると思います」と手応えを感じ取っていた。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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