山岡泰輔に増す円熟味「宮城の陰に隠れるくらいがいい」 10年目の挑戦に秘めた熱き思い

山岡泰輔が明かした決意「どこでもピースにはまればいい」
来季、3年ぶりに先発復帰するオリックスの山岡泰輔投手が、プロ10年目となるシーズンに向け、胸に秘めた熱い思いを語った。
「小さいころから、どこでやりたいとかいう気持ちで野球をしたことはありません。出ることができればどこでもいいんです。結果的に(チームで)一番勝っているのがいいのですが、エースは宮城(大弥投手)でないといけんし、(九里)亜蓮さんもいます。気が付いたら8勝とかしていて、その勝ち星がなければ優勝できなかったというのがいいですね」。球団施設の舞洲で自主トレを終えた山岡が、静かに口を開いた。
山岡は広島県出身。瀬戸内高、東京ガスから2016年ドラフト1位でオリックスに入団した。1年目から先発ローテーションを守り8勝(11敗)を挙げ、3年連続して規定投球回数(149回1/3、146回、170回)をクリア。2019年は13勝4敗で最高勝率のタイトルを獲得するなど、生え抜き選手としてチームを支えてきた。
172センチ、68キロの体を弓のようにしならせて投じるストレートに、“伝家の宝刀”の縦のスライダー、ブレーキの効いたチェンジアップなど多彩な変化球を武器にする右腕。2023年後半から中継ぎに回り、2024年は故障で6試合登板にとどまったが、今季は故障者続出で手薄になった中継ぎに専念。5月初旬のチーム合流後、41試合に登板し5勝3敗でAクラス入りに貢献した。
打者を翻弄する巧みな投球術を持つ右腕は様々な役割を求められ、それに応えてきた。2022年には、開幕ローテーションの編成上、開幕カード限定でリリーフに回ったこともあった。クールで柔軟な考えを持つ一方で、意気に感じるタイプ。チームが困った時こそ自分の出番と心得ている。
「(先発で)15試合以上、100イニング以上を投げてくれる投手がいればチームは助かります。どこでもピースにはまればいいと思います」と、与えられた役割について不満を口にすることはない。
3年ぶりに先発復帰を告げられた際、首脳陣にお願いしたのは先発、中継ぎのどちらかに専念させてほしいということだけだった。「どちらでもやります。途中で変わるのだけはちょっときついです、とは伝えました。どちらでもできるのは強みではあるんですが、中途半端になってしまいますので」。シーズン途中で中継ぎを任された2023年は、7月中旬以降の18試合で1勝3セーブ、防御率1.19と役目を果たしたが、その難しさは誰より知っている。
先発として迎える10年目。「3年目、4年目くらいまでは由伸(ドジャース・山本由伸投手)に負けないように、由伸についていかないとと思った時もありましたが、(今は)宮城の陰に隠れるくらいがちょうどいいですね。そのくらいの年齢になってきていますから。せっかく新しい風に変わりつつあるのに、もう戻す必要はないでしょう」。自分が目立たなくても勝てるチームが理想。今年9月に30歳を迎えた右腕は、ピッチング同様に円熟味を増してきた。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)