宇田川優希が育成から再出発「やることは一緒」 WBCから3年…TJ手術から描く理想

オリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】
オリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】

宇田川優希が育成から目指す支配下復帰

 オリックスの宇田川優希投手が、育成選手として迎える6年目を「育成も支配下もやることは同じ。目指すところは変わらない」と前向きに捉えている。12月10日にはトミー・ジョン手術後、初めてプルペン入りする予定で復帰に向けてスタートを切る。

 宇田川は埼玉県出身。八潮南高、仙台大から2020年育成ドラフト3位でオリックスに入団した。速くて重いストレートと鋭く落ちるフォークが武器の右腕。2年目の7月に支配下登録されると、中継ぎとして19試合で防御率0.81を残しリーグ優勝に貢献。日本シリーズでも4試合に登板し1勝2ホールドで日本一を支えた。2023年の「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の日本代表にも選出され世界一に貢献。育成選手から1年以内に世界の舞台で活躍する姿に「シンデレラボーイ」と呼ばれたこともある。

 2023年シーズンは46試合に登板し、4勝0敗、20ホールド、2セーブ、防御率1.77でリーグ3連覇に貢献した。しかし2024年の9月、緊急登板した際、右肘に違和感を覚え降板。その後、リハビリを経て投球練習を再開したものの状態は上がらず、2025年3月に右肘の手術に踏み切った。

 術後の経過は順調で、キャッチボールでは90メートルの遠投もできるようになりフォークも解禁。「ずっと真っ直ぐしか投げていなかったので少し怖さもあったのですが、いい感覚で投げることができました。このまま出力を上げていけば、自分のフォークを投げられるイメージはあります。ずっとフォークを投げたかったので楽しい」と笑顔を浮かべていた。

 しかし、宇田川を待っていたのは「戦力外通告」だった。10月29日に同じ手術を受けた小木田敦也投手、東山玲士投手らとともに、球団から「来季の支配下契約は行わない」と告げられた。近く行われる契約更改交渉では育成選手として契約する予定。復帰の目途が立っていただけに、少なからずショックを受けたという。

 もともと育成出身だけに、支配下になる苦しさも知っている。育成選手では枠の問題で2軍戦出場も限られる。支配下の“壁”は、実績があったとしても他の選手と変わらない。「やっぱり(背番号が)3桁(の育成選手)と支配下は別物。全然違います」と育成時代を振り返る。

 ただ、気持ちを切り替えるのに時間はかからなかった。「手術前から、復帰した時にはこういうピッチングをしたいというイメージを描いていました。今はそこしか考えていません。育成になってもやることは一緒です」。球威が増した剛速球と、落差の大きくなったフォークで打者を圧倒する姿を思い描き、再び支配下で輝く日を待つ。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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