今永昇太、カブス残留の裏に怪我の影響 ギリギリの決断…左腕が重視した“選択肢”

カブス・今永昇太【写真:ロイター】
カブス・今永昇太【写真:ロイター】

今オフに球団・選手ともにオプション破棄も、QO受諾で1年残留

 11月18日、カブスからフリーエージェント(FA)となっていた今永昇太投手が、球団から提示されたクオリファイング・オファー(QO)を受諾したとMLB選手会が発表した。このニュースを聞いた時、驚いた人も少なからずいるだろう。左腕はなぜ、カブス残留を選んだのか。そこには2026年にかける強い覚悟がうかがえる。

 契約の流れを振り返ってみよう。

 今永は2024年1月に最長5年まで延長可能な契約をカブスと締結。2年間で54試合に投げ、24勝11敗、防御率3.28の成績を残した。だが、今季は5月に左太もも裏を故障。戦列に戻った後は苦しい登板が続いた。

 すると今オフ、球団は2028年まで3年5775万ドル(約89億6164万円)の契約延長オプションを破棄。今永自身も1年1525万ドル(約23億6649万円)の選手オプションを行使せずにFAとなっていた。その後、カブスからQOを提示された今永は、MLB上位125選手の平均年俸2202万5000ドル(約34億円)での1年契約を受け入れ、残留が決まった。

 残留か、移籍か。「期限ギリギリまで我々も分からなかったんです」と明かすのは、代理人を務めるオクタゴン社の長谷川嘉宣・アジア統括本部長だ。同時に、今永が自身の“復活”を確信する決め手についても触れた。

 オフに入るとすぐ、左腕の姿はフロリダ州のクレッシー・スポーツ・パフォーマンスにあった。動作解析やコンディショニングアドバイス、リハビリなど総合的なサポートを提供するトレーニング施設で、ジャスティン・バーランダー投手(ジャイアンツ)、マックス・シャーザー投手(ブルージェイズ)らも通う。

 今永は今季終盤の不調の要因を色々な角度から探ろうと、同施設で投球動作解析などで得た膨大なデータを分析・解明。その結果、シーズン中に痛めた左太もも裏の影響が原因の1つであったことなどが分かり、改善のためのトレーニング方法なども含め、解決の道筋が立ったという。

 そして、新たな挑戦に乗り出す舞台として選んだのが、慣れ親しんだカブスだった。新チームに移籍して真っ新な状態から再スタートを切るという選択肢もあったが、環境にアジャストするなど投球以外の懸念を一切排除し、マウンド上で再び本来の実力を発揮できるよう集中できる環境を選んだ。言い換えれば、万が一、復調が叶わなかった時、一切の言い訳が許されない環境でもあり、今永の来季にかける強い覚悟の表れでもある。

 カブス3年目となる2026年、今永は再び輝きを取り戻し、本拠地・リグレーフィールドでファンの大歓声を浴びることができるのか。大いに期待したい。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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