渦巻く吉田正尚の“放出論”…現地の見立ては? Rソックスが直面する課題「多額の現金を追加で…」

レッドソックス・吉田正尚【写真:ロイター】
レッドソックス・吉田正尚【写真:ロイター】

トレードで先発投手補強を狙う…吉田正尚ら外野手陣を活用か

 今季、2021年以来となるポストシーズン出場を果たしたレッドソックスは、今オフにさらなる戦力強化を目指し、フリーエージェント(FA)市場とトレード市場の両方で大きな動きを見せようとしている。主な焦点は先発ローテーションの補強と、打線の中心を担う打者の獲得。投手の補強はトレード市場、打撃面の補強はFA市場で対応可能と見ているようだ。

 最優先事項はメッツからFAとなったピート・アロンソの獲得、もしくは今季レッドソックスでプレーしたアレックス・ブレグマンとの再契約と見られていた。だが、アロンソは同じア・リーグ東地区のオリオールズに移籍することが決定。村上宗隆(ヤクルト)、岡本和真(巨人)といった日本からMLB移籍を目指す打者の名前も獲得候補にあがっているものの、まずはブレグマンとの再契約に力を入れることになるという。

 一方、トレードでの先発投手補強については、吉田正尚をはじめとする豊富な外野手陣をトレードツールとして活用したい考え。ただ、吉田は売りである打撃で苦戦を続けているのが気がかりだ。

Rソックスのウィルヤー・アブレイユ(左)とロマン・アンソニー【写真:アフロ】
Rソックスのウィルヤー・アブレイユ(左)とロマン・アンソニー【写真:アフロ】

 レッドソックスの外野陣にはウィルヤー・アブレイユ(25年:115試合出場、WAR3.2)、新人のロマン・アンソニー(25年:71試合、WAR3.1)らがいるが、吉田が残した25年シーズンのWARはわずか0.2。加えて26、27年の2年で3600万ドル(約56億1600万円)の契約を残す。守備面の課題もあり、吉田のトレード先を見つけることがレッドソックスの大きな課題となっている。

 外野陣がすでに過密状態にあるレッドソックスには吉田の居場所がないのが現状。23年の新人シーズンでは140試合で打率.289、OPS.783と堅実な数字を残したものの、その後は年々成績が低下し、24年にはOPS.765、25年にはOPS.696まで落ち込んだ。こういった右肩下がりの状況も“売れない”ことに拍車をかけている。

Rソックスの「どの外野手がトレードされても驚かない」

 メジャーリーグ各球団は、両翼の守備で常に課題を抱える吉田をレギュラー級の外野手とは見ていない。指名打者としてだけの起用はロースター編成の柔軟性を制限する。そんな吉田をトレードで受け入れる球団は出てくるのだろうか。

 MLB公式サイトでレッドソックス担当を務めるイアン・ブラウン記者は、「レッドソックスが今後2シーズンで支払うべき3600万ドル(約56億7900万円)を賄うため、多額の現金を追加で支払うことは必要になるだろう」と分析している。さらに吉田は単独では大きな見返りを得られないため、より大規模なトレードパッケージとする必要があるという。

 レッドソックスはすでにカージナルスからソニー・グレイ(25年:防御率4.28)、パイレーツからヨハン・オビエド(25年:防御率3.57)を獲得しているが、先発投手のさらなる補強を目指している。ブラウン記者は、ツインズのジョー・ライアン(25年:防御率3.42、171回、WHIP1.035)、25年は故障に悩まされたものの、24年は防御率3.14、WHIP1.143、186回1/3、さらにK/9でリーグトップの10.8と素晴らしい成績を残したロイヤルズの左腕投手コール・ラガンズの獲得が近いと予測している。また、ESPNのバスター・オルニー記者は、ワシントン・ナショナルズのマッケンジー・ゴア(25年:防御率4.17、159回2/3、WHIP1.353)がトレードに出されると報じているが、この先発左腕はレッドソックスにフィットすると言われている。

 ブラウン氏は、今季157試合出場のジャレン・デュランについて「年齢、スキルセット(パワー、スピード、守備力)、契約状況(2029年までFAの資格がない)の理由から、レッドソックスがフロントラインの先発投手を獲得するための魅力的なパッケージの一部になるだろう」と分析。アブレイユも有力候補の一人だが、2年連続でゴールドグラブ賞を受賞しており、球団がさらに1年間保有権を支配できるため、トレードには考えにくいとされている。ただ、MLBネットワークのジャレッド・カラビス記者はメディア向けポッドキャスト「トーキン・ベースボール」に出演した際、「外野手は誰一人(トレード候補から)除外しないだろう」と述べ、「他球団のニーズ次第ではデュランやアブレイユを含め、どの外野手がトレードされても驚かない」と言い切った。

 果たして、吉田を絡めたトレードを画策するレッドソックスの思惑は成功の道をたどることができるのか。吉田の出場機会を増やすためにも最善の道を作ってもらいたい。

(笹田大介 / Daisuke Sasada)

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