村上喬一朗が心に刻む若月健矢の助言「真似はするなよ」 右肘手術から目指す支配下入り

村上喬一朗が右肘の不安なく迎える勝負の育成4年目
オリックス育成3年目の村上喬一朗捕手が、右肘手術後のリハビリを順調に進めている。プロ入り後の痛みとの闘いから解放され、不安なく迎える勝負の4年目を心待ちにしている。
「遡ると大学時代からの古傷なんですが、限界が来てしまって。手術後、ボールを投げるのに3か月くらいかかると言われましたが、1か月半後にはボールに触れていました。痛いから嫌だったキャッチボールも、今は楽しくなりました」。帰省を前に最後のトレーニングに励む村上が、満面の笑みを浮かべた。
村上は愛媛・松山市出身。東福岡高、法大を経て2022年の育成ドラフト5位でオリックスに入団した。法大時代は3年秋から3季連続して打率3割をマーク。2塁送球1.9秒で強肩好打の捕手として評価を高めた。ウエスタン・リーグでの出場は1年目に35試合(打率.271)、2年目は18試合(同.280)にとどまった。3年目の今季は、春季キャンプ中に行われた社会人の「熊本ゴールデンラークス」との練習試合で、途中出場ながら2安打4打点と活躍。しかし、ウエスタン・リーグでは20試合出場(同.200)に終わり、支配下に昇格することはできなかった。
勝負の育成3年目を迎えた村上を襲ったのは、右肘の痛み。大学時代から痛みと付き合ってきたが、3月のオープン戦で限界を迎え4月上旬まで戦線離脱を余儀なくされた。テーピングや痛み止め薬を飲むなどして復帰したものの、歯磨きやシャンプーで右手を使えないほどで、10月14日に手術に踏み切った。
術後の回復は順調だという。塁間(約30メートル)の強めのキャッチボールも始め、マシンでの打撃練習にも取り組んでいる。肘の不安がなくなったことで腕も振れる様になり、昨年オフから一緒に自主トレをしている若月健矢捕手から「球筋がよくなった」と、うれしい言葉ももらった。
プロで目指すのは、もちろん若月。技術はもちろんだが、野球に取り組む姿勢や人間性に憧れる。「常に野球のことを考えていらっしゃるんです。食事中でも、何かを閃いたように『こうしたらいいんじゃないかな』と言ってくださったり。でも、押し付けたりはされません。スローイングに対しても『こうやってみたらどう?』という感じで目線を下げてアドバイスをしてもらえています」。
心に刻んでいる若月の言葉がある。「スローイングで『俺の真似はするなよ』と。体の大きさも強さも違うので、そのまま真似するのではなくコーチの指導を聞いて技術を高めるようにという助言です」。全てを取り入れるのではなく、自分に合った技術を確立せよという自立の勧めでもある。
今オフも、“師匠”と呼ぶ若月の自主トレに参加する。今季、三井ゴールデン・グラブ賞とベストナインをダブル受賞し、侍ジャパンにも選出された正捕手。「今年のスタートからお付き合いをさせていただきましたが、練習量もすごいし体も強い。ボールも逸らされませんし、学ぶところばかり。まだスローイングはできませんが、キャッチングやブロッキングはできるので少しでも吸収したいと思っています」。初めて肘の不安がなくプレーできる4年目は、目標に掲げる支配下入りを目指す。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)