オリ戦力外の小野泰己が社会人入り 1軍合流を阻んだ“不思議な縁”がつなげた3度目の挑戦

オリックスから戦力外通告を受けた小野泰己が「YBSホールディングス」に入団
オリックスを戦力外となり、社会人野球の「YBSホールディングス」に入団した小野泰己投手が、新たな挑戦に胸を躍らせている。「大学からプロに入って、経験していなかった社会人。経験者からは一発勝負で楽しいと聞いており、ワクワク感しかありません」。入団が決まった翌日の12月23日、オリックスの球団施設で声を弾ませた。
小野は折尾愛真高(福岡)、富士大を経て2016年ドラフト2位で阪神に入団した。2018年に23試合に先発し7勝7敗をあげるなど、阪神での5年間で69試合に登板したが、2022年10月に戦力外通告を受け、オリックスと育成契約を結んだ。
入団後の2023年4月に支配下選手登録されたが、ウエスタン・リーグ最終戦後に行われた社会人との練習試合で左脇腹を痛めて緊急降板し、再び育成契約に。2024年オフに派遣された豪州ウインターリーグで8試合連続無失点の“無双投球”で支配下を猛アピールしたが叶わず、自身3度目の戦力外通告を受けた。
武器は最速159キロのストレート。11月12日に行われた「エイブルトライアウト」でも、参加者最速の156キロをマークした。関心を示してくれるチームもあったが、最終的にYBSを“3つ目のチーム”に選んだ。
不思議な縁もある。オリックスで掴んだ支配下を失うきっかけとなった練習試合の相手はYBSだった。その試合は2番手として登板し、2死を取った後、3人目の打者への2球目に左脇腹を痛めて緊急降板。試合後には、3連覇を決めていた1軍に合流する予定となっていた。
「YBSの濵川(皓)監督は富士大の先輩で、試合前に初めてご挨拶させていただいたのですが、その後も気にかけてくださって」。思い出したくない試合での出会いが、人生の岐路に立った小野に前を向くきっかけを与えることになった。
YBSホールディングスは1996年にクラブチームとして発足。2024年から総合建設業などのYOSHIDA GCの社員が仕事と野球を両立させる企業チームとして強化に務め、2025年には都市対抗予選で強豪の大阪ガスや日本製鉄瀬戸内を破り、第5代表決定戦まで進出した。
初めての社会人野球について「取り組みは変わらないと思います。プロで継続していくのなら新たな挑戦を、と言うかもしれませんが、これからはチームのためにやっていかないといけませんから。プロは結果を出さないとクビになってしまうし、結果を出せば稼げる世界。これからはチームのためにやることが必要です。都市対抗に出ることができるよう、チームの力になれたら」と気持ちを切り替える。
31歳の年齢はチームの最年長となる。「監督からは『自分のピッチングをして思い切りプレーをしてくれたらいい』と言われていますが、練習への取り組みや姿勢は見られていると思うので、そこはしっかりとやりたい。最年長は意識しませんが、(若い選手から)なにか聞かれたらしっかりと答えたいと思っています。教えることで新しい発見があって、うまくなれるかもしれません」と役割は心得ている。
「最近の故障は、2年前の脇腹くらい。30代に入りましたが、体は若いですよ。160キロは出したいですね」。1度目の戦力外通告を受けてから「楽しく野球をやる」と意識を変えた。「次も一緒です。新しいステージなので、より楽しくやりたいと思います」。熱いハートは心に包み、柔和な表情でこれからの挑戦を見据えた。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)