ノーノー目前の快投からTJ手術…椋木蓮、丸刈りで誓う復活 異国で掴んだ“魔球”の正体

終盤から中継ぎ転向で4ホールドを記録
オリックスの椋木蓮投手が、派遣されたプエルトリコウインターリーグでつかんだ武器を手に、5年目の来季は抑えの切り札に挑戦する。
「大学の頃からそうだったのですが、最後に試合を締めるというのは自分に合っていますし、守護神は目指したいと思っています」。プエルトリコから帰国したばかりの椋木が、力強い言葉で前を見据えた。
椋木は高川学園高(山口)、東北福祉大から2021年ドラフト1位で入団。プロ初登板となった2022年7月7日の西武戦(京セラドーム)で白星を飾り、登板2戦目の7月20日の日本ハム戦(京セラドーム)では、9回2死までノーヒット・ノーランの快投を演じた。9月に右肘のTJ手術を受け育成選手になったが、2024年の開幕前に支配下登録され1軍で10試合に登板し、1勝1敗、防御率5.54。2軍では21試合に登板し、3勝2敗、防御率1.58と着実に復活の道を歩んできた。
今季は開幕1軍を逃し、1、2軍を行き来したが、8月下旬から中継ぎに転向。9月中旬からクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージまで、7試合連続して失点、自責点0の完全救援で存在感を示した。
転機になったのは、1軍登録された8月3日の日本ハム戦(京セラドーム)。先発したが4回途中、7失点で降板してしまった。「年齢やプロ年数からみてヤバいなと思っていた時期でもあり、これがラストチャンスと思っていた中で、全然結果が出せなくて。翌日、(岸田護)監督が1時間くらい話をしてくださって、諦めるのはまだ早いという気持ちになりました」。椋木が選んだのが、中継ぎへの転向だった。「あきらめてこのまま終わるよりは、やり通そうという気持ちにさせてくれた。今あるのは、そのおかげだと思います」と感謝する。
プエルトリコでは、新しい球種のチェンジアップ習得に取り組んだ。投手全員から握りや投げ方を教わり、最終的にしっくりと合う2人の投手の握り方と感覚をミックスさせた。「楽に投げることができるイメージがある」といい、15試合に登板し1勝1敗3セーブ、4ホールド。18イニングで20奪三振。14試合目には打者4人を連続三振に仕留める快投をみせた。
「回またぎもありましたし、連投もしました。真っ直ぐの手応えや変化球の精度がよく、結果も出て自信につながりました。来年が楽しみで、待ち遠しい気持ちです」。結果が出なかったシーズン中盤、気合を入れる意味を込め頭を丸めた。「すごく自分に合っているという気がするので、このままいこうと思っています」。実績のあるアンドレス・マチャド投手や進境著しい才木海翔投手らライバルは多いが、初心を忘れず新たな自分で道を切りひらく。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)