新人時代、山本由伸からの声かけに困惑 現ドラ移籍も忘れぬ恩…茶野が救われた“金言”

2023年の新人時代、山本由伸から声をかけられた思い出
オリックスから西武に現役ドラフトで移籍が決まった茶野篤政外野手にとって、ドジャース・山本由伸投手は新人時代の1年間にバットなどの用具を提供してくれた恩人だ。感謝の思いを胸に、恩返しを誓う。
「由伸さんはオリックスでの恩人です。チームは変わることになりましたが、レギュラーを獲れるように全力で頑張って恩返しをしたいと思います」。12月27日、故郷に隣接する滋賀県近江八幡市で開かれた野球教室に参加した茶野が、前を見据えた。
同県東近江市出身の茶野は、中京高、名古屋商科大、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスから、2022年育成ドラフト4位でオリックスに入団。俊足、好打、堅守を紅白戦、オープン戦でアピールし、1年目の開幕直前に支配下選手登録された。
史上初の育成出身選手として先発起用された開幕戦では、初打席初安打、初盗塁をマーク。14試合連続安打や初本塁打をグランドスラムで飾るなど、91試合に出場しチームの活性化に貢献した。
山本からの温情は、オープン戦期間中の「用具、大変やろ……?」という言葉から始まった。山本はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を終え、チームに合流したばかり。声を掛けられて戸惑う茶野に、エースは「1年間、どこのメーカーでもいいから用具を注文していいよ」と続けた後、「来年からは(スポーツメーカーから)用具を提供してもらえるように頑張れよ」と付け加えることも忘れなかった。
バットが折れても経済面で心配することなく練習に打ち込み、実績を作って1年後にはスポーツメーカーから用具の提供を受けることができる選手になれという叱咤激励でもあった。支配下選手の契約金にあたる支度金を切り崩して、用具代金に充てようと考えていた矢先の申し出。「めちゃくちゃ、ありがたかったです」と茶野は、今も感謝の気持ちでいっぱいだという。
茶野は12月9日の現役ドラフトで西武から指名され、来季は新たなチームでプレーする。「クビにならなかったら、全然(1軍の)試合に出ていなかったので、(現役ドラフトは)あるかなと予想はしていました。オリックスでは苦しいことの方が多かったですが、いろんな経験をさせていただきました。由伸さんの連絡先は分からないのですが、西武で活躍する姿を見ていただきたいと思います」。感謝の思いは、ベルーナドームで躍動する姿で伝える。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)