696発男が受け止める薬物使用の「代償」 殿堂入りは「しなくても構わない」

ロドリゲス氏について米サイト「セラピーが新たな焦点をもたらした」
元ヤンキースでメジャー歴代5位の通算696本塁打を誇るアレックス・ロドリゲス氏は、いまだ殿堂入りを果たしていない。米スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は、「アレックス・ロドリゲスは殿堂入りしなくても構わないと考えている。セラピーが、彼に新たな焦点をもたらした」と題した記事を公開した。
同サイトは「彼の野球人生のレガシーには、パフォーマンス向上薬の使用を認めたことも含まれている。バイオジェネシス・スキャンダルは、2014年シーズンの出場停止処分につながった。オールスター選出14回、ア・リーグMVP受賞3回という実績の一方で、ニューヨーク・ヤンキース時代には“ここぞという場面で打てない”という批判も受けた。名門球団の重い歴史と、フランチャイズプレーヤーとして背負う期待が、そこにはあった」と紹介。
「殿堂入りするという考えとは“離婚した”と語った」としたうえで、その背景として「内省と責任に向き合うことを助けてくれたセラピーの存在が大きいという。 彼は自らを『回復途上のナルシスト』と呼び、一部のファンから向けられる憎悪や痛烈な批判も十分に自覚している」と指摘した。
ロドリゲス氏は同サイトの独占インタビューで「最初の40年間にはなかった人生を、私は今生きている。もし私が野球殿堂入りしたとしても、奇妙な言い方だが、私の心の中は空っぽのままだっただろう。今でもなお、多くの痛みを抱えていただろう」「今の状態のほうがいい。自分が取り組むべき多くの課題に本当に向き合うことができたからだ」と語っている。
「彼は50歳になった。娘のナターシャとエラは、かつてのスター選手時代のインタビュー映像を見て、今の父親とはまったく別人のように感じたと語っている。その変化の多くは、セラピーの成果だと彼は言う。トラウマ治療を専門とする臨床心理学者、デビッド・シュナーチ博士の助けを借りて、ロドリゲスは2014年の出場停止処分以前の年月を異なる視点で見つめ始めた。2020年に亡くなったシュナーチは、ロドリゲスがかつての自分と向き合い、なぜ彼が野球の内外でこれほどまでに二極化した評価を受ける人物になったのかを理解する手助けをした」
最初は“変化”がなかったロドリゲス氏だが、「続けていくうちに、本当にポジティブな影響を受け始めた。物事を違う見方で捉えられるようになり、過去を振り返るときも、決して被害者としてではなく、自分の行動の一部を理解するようになった。そして、そこから学び、同じことを二度と繰り返さないようにしているんだ」と徐々に変わっていったのだという。
「1年間の出場停止処分によって、自分自身を深く掘り下げ、内面に目を向けるための時間とスペース、そしてプライバシーを得ることができた」とロドリゲス氏。「今の自分があるのは、あの時行った取り組みと100パーセント繋がっていると思う。もし野球殿堂入りできないことが過去の行動の代償だったとしても、それは自分の責任だということだ」と受け止めている。
(Full-Count編集部)