怪我をしたら「ラッキーと思え」 平野佳寿の異色メンタル術…兼任コーチで気づいた発見

秋季練習でノックをするオリックス・平野佳寿兼任コーチ【写真:北野正樹】
秋季練習でノックをするオリックス・平野佳寿兼任コーチ【写真:北野正樹】

日米通算258セーブの41歳が迎える21年目

 オリックスの最年長、平野佳寿投手がプロ21年目を投手コーチ兼任で迎える。選手として3年ぶりのV奪還を目指すとともに、日米で数多くの修羅場をくぐった守護神の経験を若い投手陣に伝授する。

「社会のアウトローには気を付けなければいけませんが、野球で困った時はアウトローですね。そこは基本だと思うんで、若い子にも教えていきたいと思います」。2025年12月末、奈良警察署の「一日警察署長」を務めた平野が、防犯意識に引っ掛けて若手投手への指導の一端を明かした。

 平野兼任コーチは鳥羽高(京都)、京産大から2005年ドラフト希望枠でオリックスに入団。2011年に最優秀中継ぎ、2014年には最多セーブのタイトルに輝いた。海外フリーエージェント権を取得後、MLBに挑戦。ダイヤモンドバックス、マリナーズを経て2021年に古巣に復帰し、守護神としてリーグ3連覇、日本一に貢献した。この間、史上初の日米通算200セーブ&200ホールド、史上4人目の日米通算250セーブ、2025年4月3日にはNPB通算250セーブを達成した。

 昨季は、1軍登板が3試合にとどまり、同期入団の岸田護新監督の力になることができなかった。「肩たたきをされても仕方がない」と現役引退も脳裏をよぎった時に球団から提示されたのが兼任コーチだった。“勤続疲労”により体は満身創痍だが、昨シーズン当初から取り組んだツーシームで広がった投球の幅で勝負したい気持ちと、選手として力が発揮できない事態になっても「コーチ」としてチームに貢献できるという思いから、ありがたく受けることにした。

 秋季練習からノックバットを持ち、秋季キャンプではアップなど選手としての練習を一緒にこなした後、ブルペンで投球を見守りアドバイスを送った。新しい環境での学びもあった。「ブルペンで他の投手の投球を見たことがなかったので、速いボールを投げているんだなとかがわかるようになり、勉強になりました。また、首脳陣の方がここまで選手のことを一番に考えていてくれていたとは思いませんでした」。

 強面で近寄りがたい印象を与える平野だが、実際には心優しく後輩にアドバイスは惜しまない。昨季は、リリーフとして台頭した育成出身の才木海翔投手に「走者を出しても、0点に抑えてベンチに戻ってきたらいいんや」と、クローザーの心構えを伝授した。

 考え方も柔軟だ。2022年12月、鳥羽高での講演後の質疑で、生徒から壁を乗り越える方法を聞かれたことがあった。「やり切ったら(努力は)実る、やれば夢は叶うともいうけれど、それは絶対ではない。でも夢が叶った人は、努力をした人。試練だと思って乗り越えるしかないけれど、壁ばかりを見て越えようとするのではなく、くぐってみたり近道をせず横から行ったりするなど、柔軟に考えるのが一番。一本鎗にならないように」。壁は乗り越えるだけではないという、発想の転換に多くの生徒がうなずいた。

 また、けがで練習ができない生徒には「けがをしても、少し休めてラッキーだと思うこと。全部が全部、一生懸命では体がもたない。休んでいる期間に力を蓄えていると思えばいい。休めてよかったと思うことがプラスになる。志が高ければけがは乗り越えられる。気張らずに、ゆっくりと」とアドバイスを送った。

「プロに入ってから、壁にぶつかったことはありません」という。唯一、プロ入り1年目のキャンプ、オープン戦で力のなさを痛感したことはあるというものの、なぜ通用しないのかを考え、修正して乗り越えたそうだ。生徒らに伝えた柔軟な発想も、活路を開いたに違いない。今季は選手としてあと「1」に迫った通算1000奪三振を目指すとともに、コーチとして時機にかなった助言や指導で、チームを高みに導く。乗り越えられない壁はない。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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