2人の監督を「騙してきた」 滲ませる悲壮な決意…高級車購入で自虐「破産してしまう」

期待裏切った4年間との決別…脱“ロマン砲”へ背水の陣
「期待を裏切る形は今年で終わりにする」。そう力強く語る中日の鵜飼航丞外野手の言葉には、並々ならぬ覚悟が滲んでいた。自虐と決意に満ち溢れたスピーチから一夜。沖縄・北谷キャンプで行われたシート打撃で自慢のパワーを披露。言葉に嘘はないと証明するかのようなスイングだった。
長年「ロマン砲」と呼ばれてきた。フリー打撃では柵越えを連発し、首脳陣から「練習はいいぞ」と評されながら、実戦では結果に繋がらないもどかしさを抱えてきた。4年目を迎えた昨季は1軍で30試合に出場し打率は.189。魅力のパワーも影を潜め、本塁打はゼロに終わっていた。
前日のスピーチでは「立浪(和義)前監督をフリーバッティングで騙し、井上(一樹)監督も騙し……。今年こそは2桁本塁打を放ち、ロマン砲と呼ばれるのを卒業しようと思います」と決意。さらに「新たに自分の年俸よりもはるかに高い車を買ってしまいました。今のままでは身の丈に合っておらず、破産してしまうかもしれないので、今の外野陣を粉砕して自分がその一角を担いたい」と自虐的に笑いを交えながらも、スタメン奪取を誓った。
井上監督も称賛した実力「お墨付き」
秋季キャンプから取り組んできた「左手の使い方」の改善も実ってきた。シート打撃では内角球を肘を畳んで豪快にスイング。左翼席後方のネットに直撃する特大弾となった。鵜飼自身も「打球がスライスせず、ドライブ気味の強い質に変わった」と手応えを口にする。
今キャンプでテーマに掲げているのは「1」という数字だ。「代打でも1球しかない。フリー打撃の初球、ロングティーの1球目を大事にしている」。実戦形式の1打席目、狙っていた直球を仕留めたのは、その執着心の賜物だろう。井上監督は、「彼のパワーはお墨付き。みんなの前で話すことで自分にプレッシャーをかけて、今年にかける思いを本気で考えてくれているなら楽しみだなと思います。チャンスを掴むのは、今年しかないと思ってくれれば」と、期待を込めた。
現在、外野陣はレギュラー争いが最も熾烈なポジションの一つだ。細川成也外野手ら高い壁が立ちはだかる中、鵜飼が生き残る道は、やはり圧倒的な長打力に他ならない。「2桁本塁打を打てれば、チームは優勝に近づく。進塁打も大事ですが、僕は本塁打にこだわりたい」。ホームランテラス新設という追い風も吹いてきた。誰よりも自らにプレッシャーをかけ、退路を断って挑むプロ5年目。ロマン砲が「だまし」ではない本物のアーチを描き始めた。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)