元巨人右腕に監督オファーも「すぐにはできない」 1年間の修行…理解したプロとの違い

九州文化学園高・香田勲男監督、就任後の4年間を振り返る
念願の甲子園出場に、確実に近づいている。巨人、近鉄で投手として活躍した香田勲男氏は、九州文化学園高の野球部監督に就任して5年目を迎えている。昨夏の長崎大会は決勝に進出。春夏通じて同校初の甲子園出場まであと一歩に迫った。昨秋の長崎大会もベスト4に進出。指導者として手腕を発揮する中で、これまでの道のりを振り返った。
「いつかは地元に戻って、恩返しをしたい思いが、50歳を過ぎた頃からありました」。2020年オフに投手コーチを務めていた阪神を退団。55歳だった香田氏に、九州文化学園から監督就任要請があった。「監督もやったことがないし、投手のことしか分からない。『はい分かりました』というふうに、すぐにはできないと思っていました」。返事を保留し、1年間アマチュア野球の勉強に注力したという。
まずは研修を受け、国内の高校や大学の指導者に必要な「学生野球資格」を回復。筑波大の硬式野球部監督で、動作解析の第一人者でもある川村卓氏の勉強会にも参加した。「コロナ禍の時期で、リモートで話を聞かせていただきました。アマチュア野球、高校野球の指導はどうなっているのか、1年間は勉強期間でした」。
佐世保工時代に3度甲子園に出場した香田氏にとって、高校時代を過ごした佐世保市に校舎がある九州文化学園からのオファーが魅力的だったのは間違いない。それでも、真剣な気持ちだからこそ中途半端な状態では受諾できない。プロとの違いなどを時間をかけて少しずつ理解していった。
「待ってもらっている間も、(安部直樹)理事長から手紙を何度もいただいていました。ずっと誘っていただいていたんです。それで2021年の冬に決断して、お世話になることにしました。やりたいと思ってやれる仕事ではない。いろんなタイミングやご縁がないとできないので、母校ではないんですけど、何とか地元に野球を通じて恩返しができればいいなと思ってやっています」
丁寧な指導でチームは着実に強くなっている。昨夏の長崎大会はノーシードから進撃。準々決勝では優勝候補だった海星を5-4で破った。長崎日大との準決勝は延長10回の末に競り勝って決勝進出。創成館との決勝は9回に2点差を追いつきサヨナラの好機をつくったが、延長11回の激闘の末に惜しくも敗れた。
「高校野球の監督で甲子園に行けたら本当に面白いなと」
地元紙に「球史に残る決勝戦」と報じられた一戦を「私の経験不足だなあと感じました」と回顧する。強豪を追い詰め、あと1球、相手投手の球がボールとなればサヨナラ勝利という場面が何度もあり「子どもたちに申し訳なかった。いろんな作戦があったのかなと。ああしておけば、こうしておけば良かったなと思い返しました。もうちょっとできたんじゃないかって。本当にあと一歩のところでした」と後悔が尽きない。
夏のメンバーが残った昨秋もベスト4に進出。勝てば九州大会出場が決まる長崎日大との準決勝は、終始試合を優位に進めながらサヨナラ負けを喫した。「いい感じでゲームを作っていたんですけど、1人の選手に2本ホームランを打たれてしまって、流れをうまく引き寄せられなかった。最後はサヨナラエラーだったんですけど、そこも含めていい経験をさせてもらっています」。
ただ、互角の試合を展開した長崎日大が長崎大会で優勝し、九州大会でも準優勝。センバツ出場を決めたことで、チームに自信も芽生えている。「(長崎)日大さんといい試合ができたというのは、選手たちの自信になって、励みにもなっている。仲間を信じて最後まで諦めない野球が、伝統になってチームカラーになっていければいい」。
高校時代に3季連続で出場し、3季連続で勝利投手となった甲子園は手が届くところまで見えてきている。「高校生で甲子園に行って、プロ野球でも甲子園でプレーして、阪神のコーチもして、そして高校野球の監督で甲子園に行けたら本当に面白いなと思います」。もちろん、それが簡単ではないことは分かっている。
「まだまだいろんな経験をしないといけない。積み重ねが必要。選手の成長が見られるし、毎日が楽しいです」。60歳を迎えた今、もう1つ目標がある。「最近は体があちこち痛くて動かない。ついこの前まで投げていたけど、最近は投げられない。打撃練習で投げたくて仕方ないんです。もう1回投げられるようになりたいですね。体を作り直したいと思っています」。
佐世保工時代は、同校初の甲子園勝利に導いた。今度は長崎への恩返しで、同地区にある九州文化学園を初の甲子園に導くのが目標だ。プロで現役生活18年、コーチとしても18年間を過ごした百戦錬磨の長崎のヒーローは、地元を盛り上げるためにこれまでの経験を還元していく。
(尾辻剛 / Go Otsuji)