戦力外ドラ1を襲った現実「こんなはずじゃ」 トライアウトでHRも…アマからの再出発

三協クリエイトに加入した元西武・渡部健人【写真:喜岡桜】
三協クリエイトに加入した元西武・渡部健人【写真:喜岡桜】

元西武・渡部健人が社会人野球・三協クリエイトに入団

 暗いトンネルの先に差した唯一の光だった。2026年2月に発足し、社会人野球へ新規参入する「三協クリエイト硬式野球部」の記者会見が23日、岡山県岡山市で開かれた。創設メンバーの中に、2021年に桐蔭横浜大からドラフト1位で西武に入団し、2025年オフに戦力外を告げられた渡部健人内野手の姿があった。心機一転し、社会人野球からNPB復帰を目指す。

 プロ1年目から長距離砲として存在感を放っていた。4月に1軍登録されると、昇格した日のソフトバンク戦で和田毅からプロ初本塁打を放ち、華々しい1軍デビューを飾った。2023年は1軍に昇格のチャンスを掴むと、最下位だったチームを4番打者としてけん引した。しかし、怪我などの影響により1軍定着とはならず、2025年オフに戦力外となった。

 それからは「まだできる」と自分の力を信じ、他球団の編成部へアピールするため、契約が切れる11月最終日まで同球団施設で練習を続けた。11月にマツダスタジアムで行われた12球団合同トライアウトでは参加選手の中でただ1人、本塁打を放ち、持ち味の長打力を見せつけた。

 だが、数日経っても電話は鳴らず。12月からは桐蔭横浜大のグラウンドで体を動かし、NPB球団からの連絡を待ったが、「どこからもなかったすね」と振り返る。独立リーグ、海外のプロチームからも連絡はなく、アピールできたという自信があっただけに「こんなはずじゃなかったと思いました」と話し、悔しさから口をつぐんだ。

NPBにこだわる理由…西武ファンが教えてくれた“醍醐味”

 そんなときにかかってきた1本の電話。声の主は、2019年まで西武で4年間プレーした、「三協クリエイト」の松本直晃ヘッド兼投手コーチだった。「まだ野球は続けるのかという話をしていただいて、僕自身まだ野球がやりたかったので、続けますと」。ただ、この時はNPB以外でプレーすることは想定していなかった。

「この電話のあと、もしかしたら、他から(オファーが)あるかもしれない。そんな風に思ったので、すぐには答えが出なかったですね」。岡山に土地勘がないことも躊躇した理由の1つだった。「1週間くらい考える時間をいただきました。クビになってからずっと大切にしていたのは、もう一度プロに戻りたいって気持ち。野球を続けられるチャンスをいただけたことに感謝して、もう1回、アマチュアから頑張ろうと決めました」と明かした。

 同社の正社員として雇用され、働きながら、チームの目標である「創部1年目での全国大会出場」に向けて、月に10~15回の練習試合をこなしていく。同社が球場を保有していないため、県内の球場を借りて、主に午前中を練習に充てる予定だ。「自分の魅力は長打力だと思うので、しっかりと一発で仕留められる打者であることを、成績でアピールしていきたい」と、NPB復帰に意欲を見せた。

 獅子の魂を燃やし、ともに戦ってくれた西武ファンの人たちが、NPBでプレーする醍醐味を教えてくれた。「1軍にあがると野球が楽しかった。打席に立つだけで、大きな声で大勢のファンが応援してくれて、打つと、その声がもっと大きくなる」。あの心強い声援を、再び背中で感じるために。チャンスを与えてくれた新天地で、渾身のアーチをかけ続ける。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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